03

私の実家は、豆腐屋。
生まれた時から豆腐を食べ続けているせいか、私の息子は豆腐大好きな子になってしまった。
夫は「豆腐が大好きだなんて、さすが豆腐屋の息子だな」と笑っていたけれど……、良いんだろうか……。
昨日だって、息子の兵助は友達の勘右衛門君と一緒に豆腐を食べたって言ってたし……。
というより、その報告が毎日あるし……。



「かーさん、きょう、かんちゃんととーふたべた」



……またか。



「勘右衛門君、嫌がってなかった?」
「うーうん、いいよっていってくれた」



勘右衛門君、ごめんね!
そして兵助の為にありがとう!
子供を叱るのが苦手な私を許してくださいっ!



「そーえばね、はちが、きのう、はちのおかあさんにおこられたって、いってたのだ」
「ああ、八左ヱ門君? 何したんだろうね?」
「クモ、おかあさんにみせたって」
「ああ、蜘蛛……」



そりゃ怒るよ、八左ヱ門君……。
蜘蛛好きだったら大丈夫だけど、八左ヱ門君のお母さんは虫嫌いらしいし。



「でも、はち、おかあさんにおこられてもこわくないって」
「八左ヱ門君はよく怒られてるからねえ」
「おかあさんは、おれのこと、なんでおこらないの?」



えっ。
なんで、って言われても……。



「お母さんね、怒り慣れてないんだ」
「?」
「怒るのが苦手、ってこと」
「そーなの?」
「うん」



キョトン、として首を傾げる兵助。
意味が分かっているのか定かではないけれど、今は納得してくれたようだ。
あまり追求されるとお母さんも困っちゃうしね。



「そうだ、兵助。今日の夕飯は何が良い?」
「おとーふ!」



え、また?
昨日も豆腐料理だったよね?



「豆腐以外で」
「ぶー」
「拗ねてもダーメ」



頬を膨らませて不機嫌になる兵助。
苦笑しながら兵助の頭を撫でるけれど、まだ拗ねている。
どうやら機嫌をなおしてはくれないらしい。
拗ねてる姿も可愛いけど。



「んー、でも、豆腐ハンバーグなら、お母さん良いよ」
「っ!」



ムッとしている兵助は、私の言葉に反応する。
豆腐ハンバーグなら、豆腐感はあまりしないから豆腐を食べている気にはならない。
ひき肉も少しで済むし。



「とーふはんばーぐ、たべる!」
「うん、じゃあ決まりね」
「うんっ!」



一気に機嫌がなおった。
単純だなあ、と思いつつも「ふふっ」と笑みが零れる。
ほんと、豆腐のことになると笑顔になるんだから。
こんなちょっとしたことでも、兵助といると幸せに感じる。



(その代わり、兵助も作るの手伝ってね? by.母)
(てつだうーっ! by.兵助)

 
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