第四話「協力を頼む」


と、いうことで、現在進行形で監視されております。
私が居て良い部屋は、大川さんが居る庵とは別の庵らしい。誰も使っていないとかで、私が使っても大丈夫なんだそうだ。懐かしの畳に、土で出来た壁、「忍耐」と書かれた掛け軸。この庵の全てが私好みで、私はこの庵をとても気に入ってしまった。是非とも欲しい。持ち帰りたいわ。
とりあえず、隈がある方が潮江文次郎、綺麗な方が立花仙蔵という名前だとタカ丸に教えてもらった。えっと、潮江さんに立花さん、でOK? フルネームは覚えられないわ。苗字だけ覚えておけば充分だよね。



――あ、僕のことはタカ丸って呼んでね。さっきフルネームだったし。
「いや、初対面だったからなんて呼んでいいか分かんなくて」



いきなり話し出した私に、潮江さんと立花さんが驚きつつも私へと視線を向けた。そんなに見つめないで。照れちゃう、うふん。……ごめんなさい蹴らないで殴らないでごめんなさい!



「つーか、分かれば苗字でも良くね?」
――えー、名前で呼んでよー。
「斉藤ね、分かった」
――タカ丸だって言ってんじゃん、呪うよ?
「やだなあ、タカ丸ってば! 照れ隠しじゃんアハハ!」



コイツ黒いの? 黒属性なの? なんで私黒属性と関わってんの? 死亡フラグなの?



「……一人で喋って、気味の悪い奴だな、お前」
「いや、あの、居ますからね。私の隣に居ますから、タカ丸」
「…………」



あるぇ、無視されちゃったよ。結構傷つくなあ。……もしかして、私相当嫌われてる? 「あ、コイツとは合わねえわ」って思われてる?
少し落ち込んでいると、「コイツの事は気にするな。ただのお堅い馬鹿だからな」と立花さんが綺麗に笑みを浮かべ、そう言った。そのことに、潮江さんが額に青筋を浮かべる。が、立花さんには頭が上がらないのか、「はあ……」とため息をついて押し黙った。



「で、タカ丸は何の目的で此処に来たんだ?」
「えっと、どうやら、仲間に謝りたいらしく……」
「仲間? 名前を聞いても良いか?」



立花さんの言葉に、私はタカ丸を見る。タカ丸は、呑気に「良いよ〜」とニコニコしながら言った。その言葉を聞き、立花さんに顔を向け「大丈夫らしいです」と伝える。私は、名前を聞く為、再びタカ丸へと顔を向ける。



――平滝夜叉丸君と、
「平、滝夜叉丸」
――綾部喜八郎君と、
「綾部喜八郎」
――田村三木ヱ門君!
「田村三木ヱ門、の三人だそうです」



タカ丸から、立花さんへと顔を向ける。と、立花さんも潮江さんも、目を丸くして驚いていた。え、どうしたんだろう。



「……本当に、そこにタカ丸が居るんだな」
「え、疑ってたんですか……」
「当たり前だ。そんなすぐに信用できるわけなかろう」



……おっしゃる通りです。
でも、こんな形で鎌をかけられるとは思わなかったな。流石は忍。一般人が嘘をついているか、ついていないか、すぐに分かっちゃうんだ。しかし、「だが、すぐにアイツ等に会わせてやるわけにはいかん」と言う潮江さんの言葉に、タカ丸は「え?」と唖然とした。私も、理由が知りたい。どうして、会わせてあげられないの。



「タカ丸が亡くなって、アイツ等は元気を無くした。授業にも身が入っていないらしい。アイツ等は、タカ丸と仲が良かったからな」
「そんな状態でアイツ等に会ったら、お前が何をされるか分からん。最悪死ぬことになるだろう」



そんなに……?



「じゃあ、どうすれば良いですか? どうすれば、会わせてあげられますか?」



私の言葉に、潮江さんも立花さんも、困ったように顔を見合わせた。ふとタカ丸を見ると、先程の笑顔は消え去り、悲しそうな顔で俯いていた。触れようと思ったけれど、すり抜けたら格好悪いと思い、触れるのをやめた。そして、タカ丸の表情を見て見ぬふりをし、潮江さんと立花さんへと顔を向ける。



「タカ丸と同じ委員会に、久々知兵助という男がいる。アイツなら、力になってくれるかもしれん」



久々知、兵助……。



「だが、あまり期待するな。兵助はタカ丸の先輩で、アイツも相当参ってる」
「会う際は私達も一緒だから大丈夫だとは思うが、気を緩めるなよ」
「は、はい……」



そうだ、うっかり忘れてた。此処は忍者を育成する学校で、そこら辺に忍者見習いが居るんだ。私一人じゃ、あっさり殺される。でも、帰る為には我慢しないと。


5/30

しおりを挟む
戻るTOP
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -