おまけ@


時は群雄割拠の戦国時代。
天下を巡る戦が無くなる数年前。とある場所の山奥に、忍術学園があった。
忍装束に身を包む十代の若者や大人は、ごくわずか。その中で一人、小さな庵に鎮座する老人の姿があった。老人は皺だらけの手で饅頭を掴むと、それを口に運ぶ。もぐもぐと口を動かしていると、急に外が騒がしくなった。



「……、何事だ……?」



ごくん、と饅頭を飲み込み、そう呟く老人。
と、その瞬間。バタバタ、と慌ただしい足音が複数聞こえてきた。その足音の正体である者達は、老人の庵の障子を、スパァンッ!、と勢い良く開けると、



「学園長先生! 侵入者です!」
「妙な格好をした者が二人! ただ今先輩が連れてきます!」



忍術学園の生徒である、藍色の忍装束を着た男が二人、そう言った。侵入者?、と老人が眉を顰めたその時、新たに一人、深緑色の忍装束を着た男が現れる。冷静沈着なその男は、老人に頭を下げると、



「侵入者を連れて参りました」



そう言う。そして、彼が持つ二つの縄の先には、確かにその縄に体を縛られている二人の若者の男女が居た。
男は黒髪で、怯えているのか目に涙を浮かべ、青ざめた表情で震えている。対して女は灰色の髪で、老人を睨むように見ている。対とも思える二人に、老人は、ただ男の顔をじっくりと見た。どこかで見たような顔だ。老人の視線に気づいたのか、男を庇うように、女が男の前へと出た。まるで男女逆転だ。



「男、名は?」
「えっ……」
「私は、――七松小平太という」



老人の言葉に、予想していなかったのか、生徒である藍色の忍装束の男二人と、深緑色の忍装束の男が驚きをあらわにする。男は、老人が素直に名前を言ったことに少なからず安心したのか、「……俺、は……」と口を開く。



「比留木、です。比留木、たける……」



ああ、やはりか。
”七松小平太”と名乗った老人は、ニヤリ、と意味深に笑みを浮かべる。その嬉しそうな表情に、”比留木健”と名乗った男は困惑し、女はより一層老人を睨む。男女の表情に気づきつつも、老人は立ち上がると、笑みを浮かべて言った。



「――縄を解け! 二人は私の客人だ!」
‐終‐



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