とどのつまり


「あーあ、今頃鈴奈、どうしてるかなー」



頭の後ろで手を組みながら言う私、七松小平太。
鈴奈がいなくなって早数日。学園長先生の話が本当であれば、今頃鈴奈は元の居場所に戻って、前と変わらず日常を暮らしているのだろう。
今思えば、手のかかる友人だった。あまり自分の気持ちを言葉にしない、謙虚というよりは気が張りすぎていて、……だからこそ、気になって仕方がなかった。もっと肩の力を抜けば良いのに、生き辛そうだ、と。



「鈍くさそうだし、転んでるんじゃねーか?」
「ははっ、伊作みたいにか?」



隣に居る留三郎の言葉に、笑って返す。だが、あり得そうだ。
そういえば、鈴奈の居た場所はどういう場所なのか、聞くのを忘れていた。スッキリしているといえる服装に、戦を知らないかのような怯えた言動。平和な場所だったのだろう、妖を除いては。
いつか私も行けたら……、考えてやめた。こればかりは、どうしようもないことだ。



「ま、大丈夫だろ、アイツなら」



元気でやるさ。そう言う留三郎に、私は「うん」と自然に頷いていた。
いつか、私と鈴奈が自力で道を切り拓いた先には、きっと、良い出会いが待っているのだろう。その時まで……、仕方ない、



待っていてやるとするか。




 ***




透ちゃんと夏目君を通じて、たくさんの友人を得ることが出来た。田沼君、西村君、北本君。ほぼ男子が多いのは、彼等は元々夏目君の友人であることと、透ちゃん自身の友人が少ないことが理由だろう。
透ちゃんに友人があまり居ないのは驚きだった。あんなに優しいのに。



「そういやさ、比留木さんって行方不明の時どこ行ってたんだ?」
「こら西村! 失礼だろ!」



学校の帰り道、透ちゃんや夏目君達というお馴染みのメンバーで帰っていた。
西村君の言葉に、北本君が叱り、私に向かって「ごめんな、気にしないでくれ」と言う。西村君は思ったことをズバズバ言う素直な性格をしているが、北本君は慎重で気遣いの出来る性格をしている。二人の性格は、人見知りな私にとっては安心できる。嘘をついていないと分かるから。



「ずっと森の中を彷徨ってたの。迷っちゃって」
「マジ!? 食べものどうしたんだよ!?」
「木の実があったから。飲み物も池があったし」



返答する私に、西村君は興味津々だったが、北本君は「馬鹿正直に答えなくて良いんだぞ」と呆れた。そんな私達の会話を聞き、くすくす笑う夏目君と田沼君。
透ちゃんはといえば、散歩中のニャンコ先生を見つけると、真っ先にニャンコ先生へと飛びついた。そして、「もふもふ〜」と頬が緩めながらニャンコ先生を抱きかかえ、こちらに戻ってくる。



「あ〜ニャンコちゃんはどうしてこんなに可愛いの〜!」



透ちゃんに頬擦りされているニャンコ先生は、「助けてくれ!」と言わんばかりに夏目君に視線を向ける。そんなニャンコ先生に気づいたのだろう、夏目君はわざとらしく視線を逸らした。
ああ、そうそう。意外なことに、妖の友人も出来た。このニャンコ先生もそうだし、夏目君の家に訪問してくる中級の妖怪や、他の妖怪達。以前の私では考えられない交流だ。それもこれも、夏目君が居てくれるからこそなのだろう。



「助けてあげないのか?」
「いや、俺にそんな勇気は無いよ」



田沼君と夏目君の会話を聞き、笑みを浮かべる。

ねえ七松君、私、今自然に笑えているよ。無表情でも、怯えた顔でも、引き攣った顔でもない。心の底から、自然と頬が緩むの。きっかけを作ってくれたのは、七松君だったね。七松君に出会えたからこそ、私は変われた。

もう、立ち止まらないよ。



「なあ夏目ん家行こうぜー!」
「ちょ、西村! お前はまた唐突に……!」
「いや、俺は構わないよ、北本」
「そういえば夏目の家って久しぶりだったな」
「ええ。鈴奈ちゃんは行ったことあったっけ?」
「ううん、無いよ」



太陽の光が、はしゃぐ私達を照らした。
‐終‐



前頁 次頁
20 / 23

しおりを挟む
戻るTOP

×