多分自覚

病が再発して、三日くらい経っただろうか。
ずっと暇でつまらないけれど、昼休みになれば藤内が来てくれた。富松君も、暇さえあれば来てくれる。私への訪問者が居てくれれば、その時間はとても楽しい。――でも、最近は変なんだ。なんだか藤内だけを待っている自分がいる。他の人達より藤内と居たほうが楽しい、っていうのもあるかもしれないけれど、それとはなんだか違う。藤内と話すと、なんだかドキドキする。



「……忍者の三禁のひとつじゃん」



少し熱くなった頬を、自分の指でムニッとつまむ。私はいつから藤内のことを好きになっていたんだろう。不思議と自然に藤内を受け入れていて、自然と目で追うようになった。



「って私は乙女かッ!!!」
「――乙女? 何の話?」
「っ!!?」



いつの間にか、目の前には藤内が居た。藤内は首を傾げながら「どうした?」と私に聞いてくる。



「とっ、藤内、いつの間に来たの!?」
「え、さっきからだけど。雫ってば話しかけても無視するんだもん。へこたれるよ」
「あ……、それは、うん、ごめん」



考え事しすぎちゃって藤内が居ることに気づかなかったのか。……私変なこと呟かなかったよね? 大丈夫だよね? 「で、乙女ってどういうこと?」と藤内に聞かれ、「ああ、それは気にしないで」と返す。話せるわけない。話を変えようと「藤内はどうして此処に?」と聞くと、藤内はムスッとした表情をした。え、怒らせるようなこと言った……? 藤内の表情の意味が分からず、私は目をパチパチとする。



「休み時間にはいっつも来てるじゃん。忘れたの?」
「あー…、そっか」



そうだった。動揺のあまりコロッと忘れてた。「あはは」と苦笑する私。しかし、藤内はいまだに不機嫌なようだ。……えっとー、どうすれば機嫌をなおしてくれるだろう……。



「と、藤内はさ、どうして毎日欠かさず私のところに来てくれるの? 藤内にだってやりたいことがあるでしょ?」



私がそう聞くと、藤内はもっと機嫌を悪くしたのか、眉間の皺が増えた。これはヤバい。もはや何を言ったら良いか分からず、顔を俯かせる。重い足がいつもより重く感じる。この場から逃げたいけれど、この足じゃ絶対無理だ。



「………いの……?」
「え?」
「なんで分かんないの?」



ムスーッと私を睨む藤内。私は藤内の言葉に「え、えっと……、」と戸惑う。もしかして、前に理由を言っていただろうか。だから、怒ってたとか……?



「はあー…、まあいいや。雫って鈍感」
「えっ、鈍感!? 嘘っ、敏感だよ!!」
「バーカバーカ、鈍感雫ー」
「いつもの藤内どこにいった」



雫ちゃんちょっとイラッとしちゃったよ。



「あ、そういえば、作兵衛が後で大福持って来てくれるってさ」
「っ本当!!?」



富松君はよ来ーいっ!!

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