立てた喜びと落胆

「っ……た、たたた立てたぁぁぁあ!!!!」



休養を続け、足には斑点が無くなるようになった。善法寺先輩の「試しに立ってみようか」という提案に、私は頷き、足に力を込めた。そして、以前立てなかったのに、今ではすっかり立てるようになっていた。



「おおっ!! やったじゃねぇか!!」
「後は歩けるかどうかだな」
「じゃあ、ちょっと歩いてみる?」
「はいっ」



立てるようになったことが嬉しくて、私は少しテンションが上がってる。善法寺先輩から松葉杖を手渡され、それを脇に入れて体を支える。そして、右足を一歩前に出し、左足も更に前へ出す。



「っ……おっとと……」
「うーん、歩くのはまだ早いかもしれないね」
「えー」
「立っても良いけど、歩くのは駄目。悪化するといけないからね」



善法寺先輩の言葉に、私は不貞腐れる。とりあえず、これ以上立っているのはキツイ為、大人しくその場に座る。ふと、「あ、そうだ。明日って三年生は実習だよね?」善法寺先輩が藤内に聞き、「はい」と頷く藤内。へえ、そうなんだ。



「ってことは、明日は怪我した三年生を手当てしなきゃいけないわけだ。でも、保健委員は三年生の数馬を除いて四人。あーあ、大変だなぁー」



そう言いながら、善法寺先輩はチラッチラッと私へと視線を向ける。……あの、これってアレですよね。「手伝え」ってことですよね。絶対そうですよね。「えーっと、手伝いましょうか?」と聞くと、「うん、頼むよっ」と憎たらしいほど素晴らしい笑顔で頷かれた。善法寺先輩の笑顔の周りにキラキラと眩しいものが……。くっ……、直視できない。



「実習ってなにやるの?」
「なんだったかな……、二人組を作って他の連中と戦うんだっけ?」
「そうそう」
「えー、じゃあ怪我すること確実じゃん」
「逃げようったってそうはいかないよー」
「善法寺先輩の鬼!!」
「鬼で結構」



善法寺先輩は怪我人や病人に対してはキツいんだから、もー。それにしても、明日やだなあ。同い年の男子がわらわらと医務室に来るわけでしょ? ただでさえ人見知りなのに、そんなに大勢は来てほしくないよーうおーうおーう。隣に藤内と富松君が居てくれれば、まだ頑張れる。……気がする。



「ってことで雫ちゃん、スイカどうぞ」
「え、またスイカ……?」



丁寧に一口サイズに切られたスイカを差し出された。昨日も一昨日もスイカを食べさせられた。そんなに毎日食べていたら飽きるのに。



「食・べ・る・よ・ね?」
「……イタダキマス」



スイカつらい。

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