不安がよぎる

いつか藤内と団子を食べに行く。まだ日程は決まってないけれど、今から楽しみで楽しみで仕方ない。藤内も楽しみだと良いな。



「ふぁんかふへぇひひょうふぁふぇ」
『え、なに? なんだって? かむさはむにだ?』



ただいま食堂で朝餉を食べております。秋が何か言おうとしたけど、両頬にいっぱい食べ物を詰め込んでいるせいで言葉が喋れていない。私の言葉に、秋はもぐもぐと口の中の食べ物を噛み始める。そして、ゴクン、と飲みこんだ。そして「なんか嬉しそうだね」と改めて言う。ああ、そう言いたかったのか。



「それがさ、団子食べに行くのが楽しみで」
「浦風君と一緒に行くデートの話か」
「でっ、デート……!?」



秋の言葉に、私は目を丸くして驚いた。秋は「え、違うの?」と可愛らしく首を傾げる。



「い、一緒に出掛けるだけだよっ」
「付き合えば良いのに」
「と、友達になったばっかだよ!? 好きでもないんだよ!?」
「お似合いだと思うよ」
「話聞いてよーっ!!」



のほほんとしながらマイペースに話す秋に、私は焦ってしまう。こんな話、藤内に聞かれたらなんて言われるか。私と恋仲だなんて嫌だろうし。あ、なんかモヤモヤする。何故だ。食べ終わったところで、二人して「ごちそうさま」と手を合わせて言う。そして、御膳を持って立ち上がる。



――くらっ
「っ……?」



一瞬ふらついた。バランスは取れていたし、いたって健康なのに。だが、ふらついたのはそれだけで、他には何も起こらなかった。



「雫、どうしたの?」
「ん? ああ、なんでもない」



首を傾げる秋に、私は笑ってそう言う。「そっか」と言う秋の言葉を聞き、二人でおばちゃんの元にお膳を戻した。その際には「ごちそうさまでした」と言うのも忘れずに。食堂を出て、秋と一緒に自室へと向かう。でも、なんでかな。足が重く感じるのだ。怪我もしてないし、風邪でもないのに、おかしい。



――がくんっ
「っあ!!?」



足の力が一気に抜けた。支えを無くした体は、床へと倒れ込む。いきなり倒れた私に、秋は「雫っ!!?」と驚いた。いきなり倒れ込んだことに疑問を持ちつつも、私は秋に支えられながら上半身を起こす。



「つまづいた?」
「ううん、足に力が入らない……」



体を起こそうと足に力を入れるのに、足は動いてくれない。嫌な予感が頭をよぎる。そんな、まさか……。



「雫、どうかした?」



不安な感情に押しつぶされそうになっていると、藤内の声が聞こえた。藤内の方を見ると、藤内がキョトンとした表情で私を見ていた。藤内の後ろには、同じ三年生の忍たまが一人居る。



「あ、あの……、立てなくて……」
「えっ!? 怪我でもした!!?」
「え、と……」



まさか、病気が再発したかもしれない、なんて言えない。口を濁していると、藤内が隣に居る級友に「作兵衛、抱えてくれるか?」と声を掛けた。作兵衛と呼ばれた三年生は「おう」と言って、私の元に駆け寄ってくる。



「乗れるか?」
「え? あ、あの……、」
「ほら、早く」
「う、うん」



作兵衛さんに急かされ、私は作兵衛さんの首に手をまわす。それを確認したのか、作兵衛さんは私の膝裏に手をまわし「よいしょ」と軽々しく私を持ち上げた。わー、わー……。男の子におんぶされるの初めて……。「医務室で良いんだよな?」「うん、頼む」と藤内と会話し、作兵衛さんは医務室に向かって歩き出す。後ろから藤内と秋が着いてくるのが分かる。



「あ、あの、重いですよね。御迷惑をおかけしてすみません」
「どうってことねぇよ、用具委員会で鍛えてるし。むしろ軽いくらいだ」
「あ、ありがとう」
「おう」



さ、作兵衛さん、なんて男前……!! 少し怖い人だけれど。本当にありがとうございます。

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