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12月20日
いまだ容体が優れない局長と沖田さんと共に、私は大坂へ向かった。大坂へ着き、私は護送してくれた隊士達に丁寧にお礼を言う。「沖田さんと近藤さんのこと、頼みますね」と言う隊士達に私は頷く。隊士達はそれで帰ってしまい、私は局長の様子を見に行く。



「……すまん」
「謝らないでください。今は、療養に専念していただくことが局長のすべき事です」
「ああ、そうだな……」



弱々しく微笑んだ局長は「少し寝る」と言って、目を閉じた。私は「おやすみなさい」と言い、静かに部屋を出た。




 ***




「起きていて宜しいんですか?」



沖田さんの様子を見ようと部屋へ向かうと、縁側に座って空を眺めている沖田さんが居た。声を掛けると「ずっと寝ててもつまらないからね」と返事が返ってきた。私はとりあえず、沖田さんの隣に座る。



「そういえば、寧ちゃんってまだ生娘だっけ?」
「……それ本人に聞くんですか?」



眉間に皺を寄せ、ギロリと睨む私。私の言葉に「あ、好きな人とかいるの?」と無視しやがった。私は思わず深い溜め息をつく。私はまだ生娘だし、好きな人は貴方です!! ……なんて言えるはずがない。



「もしかして土方さんのことが好きだったりして」
「副長は素晴らしい方ではありますが、副長には千鶴が居るでしょう」
「もし千鶴ちゃんが居なかったら、土方さんのこと好きになってた?」
「うーん……、それも有り得ないかと」



現に私は、沖田さんのことが好きなわけだし。千鶴が居ても居なくても、私は沖田さんのことを好きになっていただろう。「何故そんなことを聞くんですか?」と聞けば、「なんでだろうね」と誤魔化されてしまった。そして、沖田さんの手が私の髪の毛に触れる。その優しい手つきに酔いそうになってしまう。



「髪の毛、結構伸びたね」
「ええ、そうですね」



ずっと肩上くらいまでだった私の髪の毛。ここ何ヶ月か切っていなかったからか、髪の毛が鎖骨辺りまで伸びている。その為、邪魔にならないようにまとめている。上方の髪を両側面から三つ編みにし後頭部でまとめる髪型だ。三つ編みのお嬢様結び、といったところだろうか。なんとも女の子らしい髪型にしたものだ。



「それじゃ男装してる意味なくなるよ」
「大丈夫です、外に出たら一つにまとめますから」



私がそう言うと、沖田さんは私の髪の毛から頬へと手を添えた。その行動にドキドキしつつも、「どうしました?」と声をかける。だが返事は貰えず、反対の手を腰に添えられた。それにより、私と沖田さんの距離が縮まる。……待って、何この状況。



「女の子の髪型にしてると、雰囲気まで変わるね」
「あの、近いんですけど……」
「近くない」
「え、いや、充分近い……」
「近くない」
「……はい……」



沖田さんの威圧感に耐えきれず、思わず大人しくする。しかし、こんな甘い雰囲気と沖田さんとの近い距離に恥ずかしくなる。「寧ちゃん」と呼ばれ「なんですか?」と聞きながら沖田さんの顔を見上げる。沖田さんは微笑みながら私を見ていた。まるで愛しい者を見るかのような目をしている。……そんな顔されたら期待しちゃいますよ、沖田さん。良いんですか?



「……ははっ、駄目だなあ……」
「……?」
「ずっと、土方さんのことが好きなんじゃないかって勘違いしてたとはね」
「沖田さん……?」



「頭でもおかしくなったんですか?」と、嫌味を言おうとしたその時、グイッと顔を近づけられた。もう少し近づけられれば接吻ができそうなくらい近い。自分の顔が赤くなっていくのが分かる。



「――…接吻、して良い?」



沖田さんの思いがけない言葉に、私は唖然とする。この人、今なんて言った? ”接吻して良いか”って聞いてきた?



「っ何、言ってるんですか……!!」
「もう我慢できないんだ」



沖田さんの目は真剣で、私はどうすれば良いのか分からなくなった。”我慢”って何を我慢してきたんですか……? その言葉、私の事が好きだと受け取っても良いんですか……? 沖田さんの本心は分からないけれど、好きな人に接吻を申しだされると嫌とは言えない。……私は、小さく頷いた。



「ありがとう」



沖田さんが呟いた次の瞬間、私と沖田さんの唇が合わさった。



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