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慶応3年1月
慶応2年の暮れ、徳川慶喜公が第15代将軍に就任して間もなく、孝明天皇が崩御された。公武合体派の拠り所であった家茂公と孝明天皇が続け様に亡くなったことに不安を感じ始めた。




 ***




慶応3年3月
厄介な事になった。よりにもよって夜に、”羅刹”が逃げることになろうとは。とりあえず、一番危ない千鶴の元へ向かう。「そうだ……、その血を寄越せ……!!」と言う声が聞こえ、私や副長達は千鶴の部屋の中を見る。そこには、今にも羅刹に斬られそうな千鶴が居た。副長がすぐさま羅刹を斬りつける。しかし、それだけでは羅刹は死なない。



「寧、千鶴を頼む!!」
「はい!!」



副長の指示に、私は千鶴へと駆け寄る。そして、すぐに安全な副長達の後ろへ連れて行く。千鶴を見ると、腕に切り傷があるではないか。今すぐにでも手当てをしたいけれど、今はそれどころではない。羅刹へ目を向けると、左之さんが心臓を貫いて殺していた。「どうしてこいつが……」と呟く平助さん。



「申し訳ありません。私の監督不行き届きです」



その時、山南さんが現れた。山南さんは千鶴へと目を向ける。「雪村君、大丈夫ですか?深手なのでは……」と、千鶴の傷口へ触れようとする山南さん。その時、山南さんの動きが止まった。そして、「ぐあああああ!!!」と苦しそうに叫ぶ。途端、山南さんの髪の毛は白を帯びて行く。私は慌てて千鶴を山南さんから遠ざけ、自分の背中に隠す。



「血、血です……、血が欲しい……あなたの血が……!!」



羅刹となってしまった山南さんの視線の先には、顔を真っ青にした千鶴。だが、山南さんが手についた千鶴の血を舐めた瞬間、ガクン、と膝から崩れ落ちた。なんだなんだ。山南さんの髪の毛が段々と元の黒さを取り戻していく。



「……わ、私は、何を……?」



正気を取り戻した山南さんは、息を整えながらそう言う。元に戻った山南さんに、誰もがホッとする。と、その時、「なんですか! この騒ぎは!?」と伊東さんが来てしまった。そして、部屋の中を見て顔を青ざめさせる。



「さ、ささ山南さん!? あ、あ、あなた、死んだはずじゃ!!?」
「ま、まあ伊東さん、落ち着いて」
「これが落ち着いていられるもんですか!!」



うるさく喋り続ける伊東さんを宥めつつ、近藤さんは伊東さんを連れてこの場を去った。二人を見届けた後、副長は眉間に皺を寄せながら千鶴に視線を向ける。



「……千鶴、今夜は俺の部屋を使え。それと、その腕は山崎に手当てして貰うといい」
「わ、私なら大丈夫です」
「大丈夫なわけねぇだろ。山崎は隊の医療担当で…――」
「――平気です!! 手当てなら自分でできます!!」



副長の言葉を遮り、声を荒げて言う千鶴。思わず驚いてしまった。千鶴は私達に頭を下げ、走り去っていく千鶴。何故動揺しているのかは不明だ。伊東さんに見つかってしまったのは痛いな。



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