07


「動ける隊士はこれだけか……」



副長の命令により、今現在で戦える隊士達が集まった。しかし、人数が少ない。人数が少ないとなると、勝てる確率も下がる。余程悔しいのか、山南さんが俯き加減に「怪我さえしていなければ私も……」と呟く。しかし、その怪我では戦いに出すことは出来ない。局長が心配そうな表情で「いや、留守をしっかり守ってもらわなくては」と山南さんに言う。もし目的地が一つだけだったとしたら、この人数でも余裕に勝てたことだろう。だが、今回の目的地は二つ。人数が半分に分かれてしまう。相手を逃がさない為にも、人数は多いほうが良いというのに。



「まだ本命が四国屋か池田屋か分からんのがな……」
「……隊を二手に分ける」



この長州との戦い、きっとキツイものになるだろう。




 ***




私は局長、沖田さん、永倉さん、平助さんが行く池田屋へと出発した。しかし、人数は11人という少人数。四国屋へは副長、斎藤さん、左之さん、源さんを含む24名が出発した。この人数の差は、今ある情報を元に四国屋の方が可能性が高いという理由の為である。しかし……、



「こっちが本命か……」
「近藤さん、どうします? 逃がしちゃったら無様ですよ?」



池田屋へ着いた私達。極僅かな人数で来たというのに、池田屋が本命だったようだ。かと言って、突入せずに援軍を待つというのは危険だ。私達が待っている間に、長州の奴等が帰ってしまうこともある。あるいは、私達に気づいて逃げてしまうことも。やむを得ず、「仕方あるまい……、行くぞ!!」と言う局長の言葉に、私達は一斉に刀を抜く。それと同時に、局長が勢いよく池田屋の玄関を開けた。



「会津中将殿御預かり新選組、詮議のため宿内を改める!! 手向かいすれば容赦なく切り捨てる!!」



浅黄色の羽織を纏った新選組の登場に、宿内の武士達は動揺する。だが、すぐに鞘から刀を抜いて私達を威嚇した。「斬れぇー!!」という叫びに、私達新選組は一斉に相手に斬りかかる。



「うらぁぁあ!!!」
「はぁぁあ!!!」
「っはぁあ!!」



浪士達を次々と斬って行く。その度に、血が羽織や袴に付いてしまう。あー、こりゃ洗うの大変そうだな。そんな事を思っていると、沖田さんと平助さんが二階へと繋がる階段を上っているのが見えた。あの二人は血気盛んだなあ。本当は沖田さんに着いて行かなきゃいけないんだろうけど、敵に道を塞がれて行くに行けない。



「っ……、斬っても斬っても減らんなぁ……!!」
「局長、休憩されても結構ですよ!! 貴方が死んだら意味ありませんから!!」
「なーに、大丈夫だ!! まだまだ行ける!!」



ニカッと笑う局長に、私は笑い返す。局長の笑顔を見ると、なんだか力が湧いてくる。よしっ、更にやる気が増した。ここから更に押し潰す。先程よりも勢いよく、私は迫り来る敵も、仲間に襲いかかりそうな敵も斬る。



「む? 寧、何やら力が増したか?」
「局長の笑顔を見たら力が増しました!!」
「お、俺のか……!!?」
「はい!!」



戦い始めて、どのくらい経ったか分からない。でも、息が段々と切れ始めている。と、その時、誰かが池田屋の中へと入ってきた。……あれは、少女じゃないか。少女は辺りをキョロキョロと見渡している。私は敵と応戦しながら、少女へと声を掛ける。



「沖田さんと平助さんが二階に居ます!! 申し訳ありませんが、様子を見に行ってきてください!!」
「はい、分かりました!!」



少女が私の言葉に返事をし、階段の方へと走って行く。新八さんが「なんでお前がこんなところに!!?」と動揺している。だが、階段の近くには斎藤さんが居る。何かある場合は斎藤さんが助けてくれるだろう。後に池田屋事件と呼ばれるこの戦いが終わったのは、夜が明けてからのことであった。



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