06


「――大したお手柄ですね」



重苦しい空気が漂っている。先程問題を起こした沖田さんと、それに関わってしまった少女が、山南さんに説教されている。私は少し状況が分からないまま、新八さんの隣で大人しくその説教を見ていた。それにしても怒った山南さん怖い。



「桝屋に運び込まれた武器弾薬を押収し、古高俊太郎を捕らえてくるとは」
「いいじゃないですか。上手くいったんですから」
「我々は桝屋の主人が長州の間者と知った上で泳がせていたんじゃありませんか。上手くいったからいい? それは結果論です」



うん、確かに山南さんの言うとおりだ。だが、少女に念入りに用心するように言わなかった点は、山南さんも私達も悪いのではないだろうか。……今の山南さんの状況を見ると、そんなことは言えないが。怒られているのは私ではないのに、何故か私までビクビクしてしまう。その時、山南さんの鋭い視線が私へと向いた。そのことに、表情には出さないものの内心恐怖でいっぱいになる。



「寧君は何をしていたんです?」
「頼まれていた任務がございましたので、隊を抜けておりました」
「そうですか」



私の言葉に納得した山南さんが、鋭い目を私から沖田さんと少女へと再び向けた。そのことにホッとしていると、平助さんが「桝屋を見張ってた島田君や山崎君に悪いと思わないわけ?」と少々呆れながらも言う。そのことに、山崎さんも島田さんも「我々のことなら気にしないでください」とおどおどしながら言う。



「私が悪かったんです。後先も考えずに店へ行ってしまったから……」
「あなたへの監督不行き届きの責任は沖田君にあります」



ピシャァッ、と言い放った山南さんの言葉に、少女はしゅんとする。何も知らなかった彼女を責めるのは、どうかと思うけれど。でも、知らなかったからと言って許されないこともあるか。あー、人生って難しいなあ。



「それに関しちゃ、外出を許可した俺にも責任がある。こいつらばかり責めないでやってくれ」



襖の方から聞こえた声。私達が襖を見ると、副長と局長が居た。古高俊太郎の拷問は終わったのだろうか。副長の言葉に、山南さんは「甘い」と思ったのか少し溜め息をつく。その時、新八さんが「土方さん、古高は何か吐いたのか?」と副長に聞く。その言葉を聞き、副長はより一層眉間に皺を寄せた。



「風の強い日に京の町へ火を放ち、その機に乗じて天子様を長州に連れ出す。――それが奴等の目的だ」



その言葉に、私達は「京の町に火を!!?」と動揺する。なんてマズイ事をしやがるんだ、長州は。風の強い日に京の町へ火なんて放ったら、京は一気に火の海だ。死者を大勢出て、手に負えなくなる。なんともエグイ事を考える連中だろうか。



「それに天子様を誘拐するって? 尊王を掲げてるくせに全然敬ってねーじゃん!」
「長州の奴等、頭のネジが緩んでるんじゃねぇのか?」
「……なんにしろ、見過ごせるものではない。奴等も焦っているはずだ。今夜にも、会合は開くだろう」



今夜……、それは少しばかり急な話だ。局長が会合の場所を聞くと、島田さんが「四国屋、あるいは池田屋のいずれかかと」と答えた。四国屋と池田屋か。二つの店の距離は、結構遠い。今のところ可能性が高いのは四国屋だが……。



「よし、会津藩と所司代に知らせを出せ!!」



局長の言葉に、山崎さんと島田さんが「御意」と答えて、部屋を出て行く。それを見た局長は、次に副長へと視線を向ける。



「トシ、」



隊士達を集めてくれ。



/

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -