第6話


「い、今の何なんですか!!?」
「”天の使い”って本当だったんですね!!」
「ぎゅーってして良いですか?」



詰め寄られてあたふたしてしまう。「え、えっと……」となんと答えたら良いのか分からない。とりあえず最後の言葉にツッコミを入れたい。でも我慢我慢。そんなに仲良くないんだし。斉藤タカ丸の「皆、小雪さんが困ってるよ〜」という言葉に、さっきお前に追いかけられて困ったけどな、と内心ツッコミを入れる。でも、斉藤タカ丸の言葉により、三人は私から少し離れる。そして、平滝夜叉丸と田村三木ヱ門は「すみません……」と謝った。すかさず「あ、いや、いいよ」と返事をする。



「初めまして、小雪さん。僕は四年い組の綾部喜八郎です。宜しくお願いします」
「あ、うん。宜しく」
「……とうっ!」
「う゛っ」



いきなり綾部が突進をしてきた。そのせいで変な声を出してしまった。まるで蛙の鳴き声のような、それはそれは女子力の低い声で。驚いていると、綾部が私の首に腕を回して抱きしめてきた。え。え。え。美味しくて嬉しいけど、お姉さん吃驚だよ? 周りの三人も吃驚だよ?



「小雪、良い匂いがする」
「ちょ、綾部、離れなさいよ」
「いーやー。それより、僕のこと名前で呼んでよ」
「タメ口なのはあえてツッコまないぞ」



無理矢理剥がそうとするが、綾部は全く離れてくれない。くそっ、力強いな。どうしたもんか、と困惑していると「なーまーえー」と急かされる。……仕方ない。諦めて「はいはい、綾ちゃん」と言うと、綾部は「綾ちゃん?」と首を傾げた。なんとなく、”喜八郎”より”綾ちゃん”のほうがしっくりくる。綾部もとい綾ちゃんは、この呼び方で良いのか私から離れてくれた。無表情だが、どことなく嬉しそうなのは気のせいにしておこう。



「で、三人の名前は?」



まだ唖然としている三人に視線を向ける。すると、三人はハッとしたように我に返った。



「私は戦輪を使わせたら忍術学園No.1!! の、四年い組、平滝夜叉丸と申します」
「私は忍術学園の忍たまの中でも過激な武器を扱わせればNo.1!! の、四年ろ組、田村三木ヱ門です」
「四年は組の斉藤タカ丸だよ〜」



滝、三木、タカ丸か。これで四年生制覇か。やっぱりこうやって見ると、凄く個性的だよなあ。皆顔が整ってるから、女装すればさぞかし可愛いんだろうな。



「あ、そうだ。こっちも紹介しないとね」
「え? でも、もう貴女の紹介は学園長が……」
「ううん、私じゃないんだ」



首を傾げる四人を余所に、私は釣竿型宝貝になっている太公望殿に声をかける。太公望殿は「うむ」と返事をし、光を放った。その光は私の隣に移動し、人間姿の太公望殿に変わった。その瞬間、四人は驚きの表情をあらわにする。



「えーっと、紹介するね。本来はこの姿なんだけど、事情により武器になってもらってる太公望殿」
「これから世話になるぞ、人の子等よ」



混乱している四人。まるで、先程の慌てたシナ先生を思い出す。「ふふ」と笑みを浮かべていると、綾ちゃんが「太公望さんと小雪は、どういう関係?」と聞いてきた。え、どういう関係って……、



「どういう関係……?」



太公望殿に聞くと、「私に振るな」と即答されてしまった。しかし、「まあ、相棒みたいなものだろうな」と言ってくれた。相棒ってなんかかっこいいな。「じゃあ相棒!!」と言うと、綾ちゃんが「良かった」と言って私に抱きついてきた。あ、やべ、なんだコレ。ニヤつぎが止まらないわコレ。頭を撫でると、すりすり、と頭を擦りつけてきた。かっわいいなチクショウ!!



「喜八郎君ってば、すっかり小雪さんに懐いたねぇ」



タカ丸の言葉に、綾ちゃんは「なんかね、小雪って姉上みたい」と言う。綾ちゃんみたいな弟なら大歓迎よ!! ドンとこい、ドンと!! 思わずニヤニヤしていると太公望殿に「気持ち悪い」と言われてしまった。酷い。



「……(良いなあ……)」
「なんだ三木ヱ門、羨ましいのか?」
「ばっ、馬鹿言うな!! 誰が弟になりたいもんか!!」
「三木も弟に来ていいのよ?」
「なっ……! 小雪さんまで……!!」



無表情の綾ちゃんに、ニコニコしているタカ丸、ニヤニヤしている滝に、照れている三木。そして、微笑んでいる太公望殿に、笑っている私。この世界に来て一日目だというのに、落ち着くのは何故だろう。



「では、私はそろそろ戻ろう」



そう言って、太公望殿は再び光を放った。手を差し伸べると、その光は私の手に乗った。やがて、その光は武器である釣竿型宝貝へと変わった。「本当凄いんですね」としみじみ言う滝に「じきに慣れるよ」と返事をする。その時、タカ丸が「あ」と言った。どうしたのだろうか。



「そろそろ夕餉の時間だから、皆で行かない?」
「そうですね。調度お腹も空いてきましたし」
「小雪と太公望さんも行こ」
「え、良いの?」
「当たり前じゃないですか。さあ、早く行きましょう!」



綾ちゃんに手を引かれ、私の足が動いた。それを合図に、滝達も歩き出す。え、本当に良いのかな。会って間もないのに、夕食を一緒に、だなんて。おこがましくはないだろうか。



「今日の夕餉はなんだろ」
「焼き魚とかが良いなあ。小雪さんは何が食べたいですか?」
「うーん、そうだなあ……、ハンバーグとか?」
「ハンバーグ美味しいですよね!!」
「戦輪型ハンバーグとかは作ってくれないだろうか…」
「「「「さすがに無理だろうな」」」」

 
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