第5話


夕食まで時間がある為、自由に出歩ける許可を貰った。シナ先生とお茶をした後、私はブラブラとそこらへんを散歩する。通りかかった生徒達にジロジロと見られるが、話しかけられる事は無い。それにしてもこの学園の庭、とても素敵だと思う。木もたくさんあるし、池も綺麗。正に「和」だ。



「――…見つけた!!」



声がした。吃驚して「お?」と声に出しつつ、声のした方を見る。そこには、金髪が特徴的な斉藤タカ丸が居た。おま、さっきお母さんと話してたじゃん。どうした。



「小雪さん、そこに居てください」



そう言う斉藤タカ丸の手には、握り鋏。頬は赤く染まっていて、心なしか鼻息が荒い。え、何。怖いんだけど。一歩一歩ゆっくり近づいて来ながら「その艶やかな焦げ茶色……、風が少し吹いただけでたなびくサラサラ……、」とぶつぶつ呟く斉藤タカ丸。私は逆に、一歩一歩ゆっくり後ろにさがる。駄目だ。嫌な予感しかしない。



「是非とも僕にその髪の毛を結わせてくださぁぁぁあいいいい!!!」
「っ怖……!! 来るな!!」



斉藤タカ丸に背を向けて走る。だが、斉藤タカ丸は逃げる私を追いかけてくる。ちょ、おま、足速くないですか!!? あ、忍たまだから当たり前なのかな。って冷静に判断してる場合じゃない!!



「おお!! 走ることによって揺れる髪の毛も綺麗!!」
「うっわ捕まりたくない」



とりあえず庭へと逃げる。続いて、斉藤タカ丸も庭へと来た。



「ああ、もう!! なんで来るn」
――ズボッ
「おおおおお!!?」



文句を言いながら走っていたら、足元の地面が消えた。吃驚していると、急な浮遊感に襲われる。そして、ドッ、とお尻に衝撃を受ける。そのお尻の痛みに思わず「いっ!!」と声を上げ、お尻を擦る。どうやら落とし穴に落ちてしまったらしい。痛い。



「ふっふっふ……、もう逃げられませんよぉ〜」



私が落ちた落とし穴から少し離れた場所で、斉藤タカ丸の声が聞こえる。しまった……、もう逃げ場なんてないじゃないか。腹を括っていると、



――ズボッ
「あうっ!!」



何者かが落とし穴に落ちた音と、斉藤タカ丸の声が聞こえた。あ、コレってまさか……。落とし穴の中から、落とし穴に落ちたであろう斉藤タカ丸に「えーっと、大丈夫ー?」声をかける。落とし穴から会話をするなんて変なの。



「大丈夫じゃないですぅ……」



弱々しい斉藤タカ丸の声。私は思わず苦笑してしまった。釣竿型宝貝を持っていて良かった。私は仙術球を出現させ、仙術球が落とし穴の外に落ちるように腕を振る。



「よいしょ」
――ドォンッ



仙術球は見事に落とし穴の外に落ちた。私は思いっきり地を蹴る。体は宙に浮き、釣竿は糸を辿って仙術球へと向かう。トッ、と落とし穴から飛び出た私は、静かに地面へと足をつける。凄いな。まさかできるとは思わなかった。どうやら私の体は、戦闘能力が高くなっているらしい。



《ほう、頭を使ったな》
「でしょ」



太公望殿に返事をし、斉藤タカ丸が入っているであろう落とし穴の中を覗く。斉藤タカ丸は影ができたことによって私の存在に気づき、私を見上げる。そして、目を丸くして驚いた。



「落とし穴から出たんですか!?」
「まあ、ちょちょいのちょーいってね」
「す、凄い……」
「ありがと。ちょっと隅っこ寄ってて」



私の言葉に首を傾げつつ、斉藤タカ丸は落とし穴の隅っこに避けた。私は先程出現させたままの仙術球を、落とし穴の中へ入れる。



――ドォンッ
「えっ!?」



仙術球は斉藤タカ丸の目の前へと落ちた。当然、斉藤タカ丸は驚いている。「釣り上げるから、それに乗って」と言うと、斉藤タカ丸が慌てて仙術球へと乗る。私は「しっかり捕まっててね」と声をかけ、おもいっきり仙術球を釣り上げる。



「うわぁぁあ!!?」



仙術球は私の頭上を跨ぎ、後ろへドォンッと落下。無事に助けられたが、斉藤タカ丸は唖然としている。私はその姿に「ははっ」と笑いつつ、斉藤タカ丸に「大丈夫?」と言いながら近寄る。「は、はいぃ……」と言いながらも、いまだ驚いている斉藤タカ丸。「何が起きたか分からない」という表情をしている。ふと、後ろに誰かが居るのを感じた。



「――…おやまあ」
「な、なんだ、今の……」
「し、信じられない………」
「あ、喜八郎君に三木君に滝夜叉丸君!!」



……おおっふ、四年生勢揃いですか。

 
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