第4話


庭に来た。既に生徒達や先生方が集まっていて、思わず口角が引き攣った。学園長が皆の前に立って話をしている。しかし、生徒達の大半の目は私達家族にいっていた。



「……オカン、その年齢でその格好は痛いわ」
「えー?」



お母さんの格好は、三蔵様の格好。だが、腹は見せてはいない。ちなみに、太公望殿は武器の姿に戻っている。太公望殿同様武器である三蔵様は私の言葉に「酷いよ!! 緑子さん可愛いのに!!」と可愛らしく怒った。だけども……、あれは三蔵様だから似合うんだと思う。



「小雪、今失礼なこと思ったでしょ」
「そんなまさか」



ふと、お兄ちゃんとお父さんを見る。お兄ちゃんは酒呑童子の格好、お父さんは悟空の格好をしていた。地味に似合っている。その時、「朝司達、こっちに来なさい」と学園長に呼ばれた。全員の視線が私達に向いているのが分かる。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、私の順で学園長の元へ行った。全員の視線が痛いのなんの。



「左から氷室朝司、妻である緑子、息子である柊、娘である小雪じゃ。こやつ等には、この学園で働いてもらうことになった」



学園長が、お父さんに「自己紹介をするように」と言った。お父さんは緊張をしながらも、口を開く。ちょっとした自己紹介が、お母さん、お兄ちゃんと終わり、次は私の番だ。あ、何言おうか考えてないや。



「……悩み相談、承ります。宜しくお願いします」



よし、噛まずに言えた!! 私って大事な時に噛むんだよね……。「よくやった自分」と内心ガッツポーズをしながら満足感に浸っていると、



「――あの!!」



と何処からか声がした。声のした方を見ると、髪が傷んでいる少年が居た。その少年は、竹谷八左ヱ門である。竹谷八左ヱ門の目は完全に私を捉えていて、頬は何故か赤かった。一応確認として人差し指で「私?」と首を傾げると、コクコク、と頷いた。



「し、失礼ですが、年齢は……?」
「えっと、18……」



驚きながらも控えめにそう言う私。竹谷八左ヱ門は「18!?」と驚いた顔をしたかと思えば、何故か沈んだ。な、なんなんだ……。焦って学園長に顔を向けると、「ふぉっふぉっふぉ」と笑われるだけだった。



《お前も罪な女だな》



どこが。太公望殿の呟きに内心思う。混乱していると、学園長が「解散!!」と言った。それにより、周りが散らばって行く。どうやら、自己紹介はこれで終わったらしい。これからどうしようか迷っていると、「緑子さんの髪の毛綺麗ですねぇ!!」「ふふ、でしょでしょ? ふふふ」と言うそんな会話が聞こえた。そちらを見ると、お母さんと斉藤タカ丸が仲良さげに話しているではないか。あの二人、なんだか気が合いそうだな。さて、私は…――、



「シナ先生、お茶しましょー!」



少し遠くに居るシナ先生に手を振った。シナ先生は微笑み、頷いてくれた。ヒャッホーウ!! やったね!!

 
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