第34話


「と、いうわけで、始まりました!! 学園長先生の突然の思いつき!! 氷室家の腕試し大会!! 司会はこの私、土井半助が務めます!!」



皆が集まった庭で、土井先生がそう言った。私は太公望殿と妲己と四年生メンバー、五年生メンバーと一緒に座る。といっても、太公望殿の場合、釣竿型宝貝になっているんだけど。ああ、今から始まってしまうのか。どうかどうか、強い人と当たりませんように。



「第一回戦は緑子さん、第二回戦は小雪、第三回戦は柊、第四回戦は朝司さんとなります。ちなみに、氷室家の対戦相手は、自分が戦うことを知らされていません!!」



マジで。第二戦目って、前半のほうに入るじゃん。プチ絶望していると、「やあ、小雪」と後ろから声をかけられた。振り返って見ると、そこには私服姿の利吉。どうやら普通に忍術学園に来ただけのようだ。利吉は「父上から小雪の実力が見れると聞いて飛んで来たよ」とニッコリ笑って言い、私の隣に来た。



「来なくても良かったのに」
「酷いなあ」
「だって、どうせ無様な姿見せるだけだし」
「まだ分からないじゃないか」



とりあえず利吉に座るように言う。利吉は私の隣に座った。私の反対隣にはハチが座っている。膝の上には何故か団蔵。「それでは緑子さん、中へどうぞ」と言う土井先生の声が聞こえ、試合場に顔を向ける。お母さんは呑気に「はーい」と言って、試合場に入った。



「対戦相手は……、斉藤タカ丸!!」
「え!? 僕ですか!?」
「タカ丸、がんば。オカン空飛ぶから気をつけて」
「えええ!? 空を飛ぶ!!?」



心底驚いた、という顔をするタカ丸。そんなタカ丸に私は笑いながら「はよ行ってこい」と言う。すると、タカ丸はどんよりした雰囲気で、試合場へと行った。両者揃い、「それでは、始めッ!!!」と言う土井先生の言葉に、それぞれの武器を構えるお母さんとタカ丸。「行くよ、三蔵ちゃん」「いつでもどうぞ、緑子さん!」と言う二人の声が聞こえた。次の瞬間、お母さんが動き出した。通常攻撃を繰り返すお母さん。一方、タカ丸は攻撃を避けるだけだった。



「よいしょー!」
「あ、わわっ……!」



左足を軸にし、縦に回転するお母さん。いきなりのことに驚きつつ、タカ丸はその攻撃を避けた。よろけるタカ丸。その隙を、お母さんは見逃さなかった。



「はあっ!!」
「っ!!」



下から上へ、袖でタカ丸の顎をひっぱたく。その攻撃をまともに食らったタカ丸は、地面へと倒れた。倒れたまま「ま、参りましたぁ〜……」と弱々しく言いながら目を回すタカ丸。どうやら、勝敗がついたらしい。



「勝者、緑子さん!!」
「やった!!」



土井先生の言葉に、試合場は歓声に包まれた。お母さんは照れくさそうに笑う。しかし、すぐにタカ丸に駆け寄り、「大丈夫?」と声をかける。タカ丸は「大丈夫れすぅ〜……」と言うものの、「大丈夫じゃない」のが現実。お母さんは苦笑しながらタカ丸を背中に背負い、試合場を出た。



「え、心臓うるさすぎ死にそう。次私じゃん」
《落ち着け。お前なら出来る》
「心がこもってないよ太公望殿」



青ざめながらも太公望殿と会話をしていると、土井先生に「次、小雪! こっちに来い!!」と言われた。うぐぐ……。「小雪さん、頑張ってください!!」と言ってくれる団蔵を後ろからぎゅーっと抱きしめる。すると、団蔵が照れたように笑った。団蔵天使マジ天使。デレッデレになりつつも、釣竿型宝貝を担いで立ち上がる。



「小雪さん、無理しないでくださいね……?」
「うん」



心配そうなハチに笑いかける。ハチは私の笑顔を見て、ふにゃっ、と笑った。ハチ天使マジ天使。「じゃ、行ってきます」とそう言って、皆に背中を見せて試合場へ入る。後ろからは皆の「行ってらっしゃい」という言葉が聞こえる。すっごい嬉しい。試合場に入ると、皆の目線が突き刺さって逃げ出したくなった。



「えーっと? 小雪の対戦相手は…――…七松小平太!!」
「いけいけどんどーんっ!!」
「先生私棄権しますッ!!!!」



(駄目だぞー。by.土井)
(なんで!!? by.小雪)

 
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