第33話


「――…小雪ちゃん、それ誰につけられたの?」
「え?」



出かける用の着物から、太公望殿の着物へ着がえている時、妲己がそんなことを言った。私は何の事か分からず、首を傾げる。すると、妲己は鏡を私に渡し、「鎖骨の上あたり」と言う。言われたように鏡で鎖骨の上あたりを見ると、そこにはキスマークらしきものが出来ていた。



「昨日の朝はついてなかったし……、竹谷君に付けられたの?」
「っ!! ち、違っ……!!」



本当は物凄い心当たりがある。今朝、ハチに鎖骨辺りに何かをされた。もしソレが、このキスマークを付ける行為だとすれば辻褄が合う。口をもごもごさせる私に「あ、図星なんだ。竹谷君と付き合ってるのー?」と言う妲己。私は「う、うるさいっ!!」と妲己に鏡を投げつけて、急いで着がえる。妲己が「いったーい!!」と言っているが無視だ。



――スパァーンッ
「小雪さん!! ハチと付き合うことになったって本当ですか!!?」
「本当にハチで良いんですか!!?」
「悔いはありませんか!!?」
「ちょっと皆!! 急に入ったら失礼だよ!!」
「ってうわぁあ!! 着替え中ぅぅう!!?」



いきなり入ってきた五年生メンバー。着替え中だったにしろ、あとは肩の緑色のひらひらした物を身につけるだけだったから良かった。私は思わずポカンとする。「えーと……?」と首を傾げながらも、とりあえず緑色のひらひらした物を身につける。よし、後は髪飾りやら耳飾りやらをつけるだけ。



「チッ、もう少し早く来れば良かった」
「テメェ三郎、小雪さんの着がえ途中見たら殺すぞ」
「ハチが凶暴に!!?」



会話をするハチと鉢屋を余所に、「振ったのに、なんで付き合うことに……?」と控えめに聞いてくる尾浜。確かに、尾浜は私が泣いていたことも、私がハチを振った理由をちゃんと知っている。尚更疑問に思うのだろう。



「うーん……、やっぱね、好きになっちゃうと止まんないよね」



私の言葉に、尾浜は納得したように笑みを見せる。尾浜の隣にいる久々知は「おお……!! 付き合ってる感が出ているのだ……!!」と言いながら豆腐を食べた。お前ちょっと豆腐置いておこいや。



「あ、そうだ。不破って図書委員だよね?」
「え? あ、はい」
「これ、返しといてもらえる?」



そう言って、私は三国志の本を不破に渡す。受け取った不破は、「三国志?」と首を傾げた。「好きなんですか?」と聞かれ、「うん、大好き」と答える。思わず頬が緩む。私が一番好きな武将は王異さん。女性なのに戦に参加したことのある勇敢な人。私も、あの人のように強くなりたい。そう思った時、いくつもの足音が聞こえた。



――スパァーンッ
「竹谷先輩はいますかー!?」
「あっちだぁぁあ!!」
「こっちだよ、左門」



あ、なんかデジャヴ。
部屋に訪れた三木、左門、綾ちゃんの三人。ハチが戸惑いながら「此処にいるけど……」と言う。すると、三人はハチの目の前に行き、正座をした。そして、「竹谷先輩!!」と言い、真剣な表情になる三人。綾ちゃんまで真剣だなんて珍しい。こっちまで緊張してしまう。



「小雪さん、いえ、姉のことを宜しくお願いします!!」
「本当は取られた感じがして嫌なんだけど、小雪が幸せなら竹谷先輩に譲ります」
「その代わり、小雪さんを不幸にしたら遠慮なく奪いますからね!!」
「お、おう……?」



三人に押されながらも頷くハチ。三人はハチの返事に満足したのか「失礼しました!!」と出て行ってしまった。ああ、我が弟達よ。お前等は一体なにがしたかったんだ。



「小雪ちゃん、小さい子に好かれるわよねぇー」
「子供は可愛いからね」
「え、それ関係ある?」



あ。明日の腕試し大会どうしよ。

 
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