第31話
「小雪さん、」
「っあ……」
竹谷に追い詰められてしまった。私の腕は、顔の横で竹谷の手に捕まっている。竹谷の表情が見えない。どうしよう、怖い。竹谷が私の首に顔を埋める。竹谷の髪の毛がチクチクと首や頬に当たり、痛いようなくすぐったいような。「やめて」と言おうとすると、竹谷が私の首筋を舐めた。
「ひうっ」
思わず声が出てしまった。それは、今までの自分でも聞いたことのない艶のある声。その声を聞いた竹谷が、私の耳元に唇を近付けた。
「小雪さん、可愛いです」
「っ……」
甘く低い声が、耳元で聞こえた。その瞬間、ゾクッ、と体が反応した。やだ……、なに、この雰囲気……。逃げたいけれど、力を込めてもビクともしない。どうして。太公望殿の力を借りて以来、強くなったはずなのに。
「たっ、竹谷!! いい加減にして!!」
耐えきれなくなり、そう怒鳴る。そのとき、やっと竹谷が私と目を合わせてくれた。その表情は、なんだか悲しそうな顔で、私は言葉を失った。
「――……小雪さんって、俺のこと好きですよね……?」
いきなり言われた竹谷の言葉に、私は動揺する。なんで、本人が知ってるの……。唖然とする私に、竹谷は少し笑みを浮かべ「伊達に忍たま五年もやってませんよ」と言った。確かに、忍者からすれば私の嘘なんて見抜かれるかもしれない。
「俺のこと好きなのに、どうして俺を振ったんですか……?」
「っそれ、は……」
「住む世界が違うから?」
「っ……」
「図星ですか」
返す言葉が無い。実際に振った理由は、竹谷が言った通り。
「俺は、住む世界が違っても、小雪さんのことが好きです。大好きで、愛しすぎて仕方がないんです」
「でも……、いつかは離れ離れになるし……」
「だからって、想いを伝えないまま離れるのは御免です。離れ離れになるまで、独占したいし」
「……だって、きっと、辛いよ……?」
「貴女を独占しないまま別れる方が、俺にとっては辛いです」
涙が、出てきてしまった。竹谷の言葉が凄く嬉しくて、離れたくなくて。私の涙を、竹谷が優しく拭いてくれる。
「わ、たしだって……、好きだもんっ……!!」
涙ぐみながら言うと、竹谷が優しく抱きしめてくれた。竹谷の温もりが伝わってくる。「両想い、ですね」と言う竹谷の言葉に、私はボッと顔が赤くなる。竹谷はそんな私の表情を見て微笑み、私をお姫様抱っこした。「え!? え!?」と混乱していると、布団の上に降ろされた。そして、優しく押し倒される。
「風呂上がりの小雪さん、凄く妖艶ですね」
「はあ!?」
「やっても、良いですか?」
「だ、駄目!! 絶対駄目!!」
しかし、竹谷の手は私の襟へと行っている。それを止めようとするが、男の力を前にビクともしない。やばいぞ、これは!! 私完全に犯されるっ……!!
「ちょ、ちょっと待って……!!」
「もう遅いですよ」
「は!? いや、待っ……!!」
この後、ドSスイッチの入った竹谷に犯されたのは言うまでもない。