第30話


竹谷と共に、学園長のお遣いをすることになった。
よりにもよって、竹谷と、だ。竹谷のことが好きだと自覚をし、告白までされてしまった。しかし、お互いに住む世界が違う。私は告白を断ってしまった。その時の竹谷は、驚き、悲しそうになり、泣きそうになり、とても複雑な表情をしていた。好きだというのに振ってしまった相手と、二人っきりでお遣い。気まずくないわけがない。しかし、笹餅は既に買った。あとは忍術学園に帰るだけとなった。



「――…あ……」



ポツポツ、と頭上から何かが降ってきた。それは次第に強く降ってくる。



「雨、ですね。小雪さん、早く帰りましょう」
「あ、う、うん……」



竹谷は、いつも通り接してくれる。私もそうしなきゃいけないのだが、どうしても意識してしまうようだ。緊張していると空から、ゴロゴロ、というか雷の音が聞こえた。雷に慣れていない私はそれだけでビクッとしてしまう。



「ここから学園まで少し遠いですし、今日は宿に泊まったほうが良さそうですね」
「あ……、お金大丈夫……?」
「はい。学園長先生から余裕に貰ったので」



それなら安心だ。一緒に歩きながら、泊まれそうな宿を探す。しかし、急な雨と雷のせいもあって、私達と同じような考えに至る人が多いらしい。宿は、ほとんど取れなかった。



「――…申し訳ありませんが、今日は大変混んでいまして……、部屋が一つしか空いてないんですよ……」



とある宿。
やっと部屋が空いている宿を見つけた。しかし、部屋はひとつしか残っていないらしい。でも、ここまできて野宿というのは絶対に嫌だ。だとしたら、同じ部屋でも良い。「その部屋で構いません」と言うと、隣にいる竹谷が「え!? 小雪さん!?」と驚きの声を上げる。しかし、店主が「へえ、分かりました。案内しますから、此方へどうぞ」と言って宿の奥へと足を動かした為、竹谷は私と一緒に店主を追いかけた。



「此方の部屋です。部屋にお風呂がついております」



宿の一番奥の部屋。店主さんが部屋の襖を開ける。六畳ほどの部屋で、二人で使うのは少し狭い。しかし、部屋にお風呂がついているのはありがたい。これで面倒な道のりを歩かずに済む。



「ありがとうございます」
「では、私はこれで。ごゆっくりと」



店主さんが頭を下げて行ってしまった。取り残された私と竹谷は、とりあえず部屋の中に入る。とりあえず、お兄ちゃんに「雨が降ってきたから宿に泊まる」というメールを送る。



「小雪さん、濡れたでしょうから先にお風呂にどうぞ」
「……う、うん、ありがとう」



寝間着は宿に置いてある着物を使おう。下着は変えがないから、同じもので。不本意だけど。




 ***




風呂から出て、竹谷を見る。竹谷は私と自分の布団を敷いていた。しかも、しっかりと布団と布団の間を取って。「あ、ごめんね。私の分まで……」と言うと、私の存在に気づいた竹谷が私を見る。その瞬間、顔を真っ赤にさせて口を手で覆った。どうしたのだろうか。熱がないか確かめる為に、竹谷に近寄る。



「竹谷、どうs……っ!!?」



いきなり、竹谷に押し倒された。突然のことに驚いて、声も出なかった。竹谷は顔を真っ赤にしているが、眉間に皺が寄っていた。ちょ、ちょっと!! 何してんの……!!? 慌てて竹谷を退ける。竹谷は簡単に退いてくれた。私は上半身を起こして、竹谷から逃げるように後ずさる。しかし、竹谷は逃がさないように私を追いかける。



――トッ
「っ……」



背中が壁に当たる。もう、これ以上後ろに逃げることはできない…――

 
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