第25話


竹谷のことが好き。
そう自覚してしまってから、どうしても意識してしまう。顔も赤くなり、目線が泳いでしまう。まともに目を合わせることもできない。かなり重症なのだ、と我ながら感じる。そして今、ジュンコがいなくなったという生物委員会の手伝いをしているわけなのだが……。



「小雪さん、ジュンコ見つかりましたか?」
「っえ!? い、いや、まだ……!!」
「……? 顔、赤いですけど大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫大丈夫!! 問題ないよ、うん!!」



意識しすぎてどうすれば良いのか分からない。落ち着け自分。こんな挙動不審じゃ竹谷に引かれる。竹谷は雑巾、竹谷は雑巾……!! 今は、逃げたジュンコを探すことに集中しなくちゃ!! ……でも今二人きりじゃん……!! 意識しないとか絶対無理じゃん……!!



「えーっと、小雪さん? 本当に大丈夫ですか……?」
「大丈夫!! 私超元気だから!!」
「そ、そうですか」



なに言ってんだオイィィイイ!! いつもの余裕たっぷりな自分どうした!? 今日一体どうしたというの!?



「――ジュンコ見つかりました?」



後ろから声が聞こえ、後ろを振り返る。そこには、心配そうな表情をした孫兵の姿があった。私は「まだ見つかってない」と、孫兵に言う。すると、孫兵は「そうですか……」としょんぼりしてしまった。そんな孫兵の頭に手を置き、「ジュンコは頭が良いから、きっと大丈夫だって」と元気づけようとする竹谷。



「そうですが……、もしジュンコに何かあったら……」
「ジュンコはいつだって必ず孫兵のところに帰ってくるし、もし何かあったら、孫兵がジュンコを助けるんだろう?」



「な?」と笑う竹谷。孫兵は、そんな竹谷の笑顔を見て「はい!!」と元気よく答えた。竹谷は後輩思いの良い先輩なんだなあ……。「では、僕は向こうのほうで探してきます!!」とそう言って、孫兵が茂みの方へ走って行ってしまった。残された私と竹谷。先程から私の様子がおかしい為、竹谷が心配そうにチラッチラッと私を見る。だ、大丈夫さ。きっと上手くやっていける。



「わ、私、向こう探すね……!!」



そう言って、用具倉庫の方へと向かおうと足を動かす。しかし、「ま、待ってくださいっ!!」と竹谷が私の手首を掴んで引き止めた。驚いて思わず竹谷を見る。それにより、視線が交わった。私は、バッ、と視線をずらす。



「――…俺、小雪さんが好きですっ……!!」



頭が真っ白になった。目の前にいる竹谷は、これでもか、というくらいに顔が赤い。私の手首を掴んでいる手からも、熱が伝わってくる。「え、あ……」と口がパクパクと動く。
好きな人に告白されて、私の顔も真っ赤だ。まさかの両想いで、凄く嬉しい。しかし、私と竹谷は生きる世界が違う。竹谷はこの世界で育ってきたが、私は別世界で育ってきた。時代だって、500年程も違う。



「……あの、竹谷……、」



断る際には、なんと言ったら良いんだろう。私は、俯いて眉間に皺を寄せる。両想いなのだ。それなのに、断らないといけない。胸が、キュウ、と締め付けられる。



「――…わた、し……、竹谷の想いには答えられない……」



泣きそうになるのを堪え、そう言った。無意識に口が震える。竹谷は私の言葉を聞いて、力無く私の手を放した。「そう、ですか……」という竹谷の声は弱々しい。こっそり竹谷の顔を見る。その表情は今にも泣きそうで、悲しそうで……、複雑な顔をしていた。



「め、迷惑かけてすみません……! 俺、ジュンコ探してきますね!」



そう言って、無理矢理笑顔を作って行ってしまった竹谷。……迷惑なんかじゃなかった。本当は、凄く嬉しかった。謝るべきは私なのに。

 
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