第9話


夕餉を食べ終えた後、四年生と別れた。早歩きで自室へと向かう。「はー、お腹いっぱいだー」なんて、そんなことを言いつつ、自室の障子を開ける。中にはシナ先生がいると思ったが、シナ先生はいなかった。代わりにいたのは…――、



「あ!! 小雪さん!!」
「お邪魔してます!!」



一年生の二人組でした。二人は若干隈ができている。とりあえず「どうしたの?」と聞きつつも部屋の中に入る。すると、二人は姿勢を整え、



「初めまして!! 僕は一年は組の加藤団蔵っていいます!!」
「一年い組の任暁左吉です!!」
「「相談したいことがあるんです!!」



と、声を揃えて言う。なんだか焦った表情をしてるけど……。まあ、初の仕事だ。やり遂げてみせましょう。とりあえず二人の目の前に座り、「相談って?」と聞く。その瞬間、二人共困った表情を見せる。



「あ、はい。僕達会計委員なんですけど、その委員会の仕事が徹夜続きで……」



徹夜続き? それは体に悪いねえ……。



「締め切りが近くて、なんとしてでも締め切り前には終わらせないと」
「そこで、小雪さんに手伝ってもらいたいんです!!」



成程、ね……。でも、正直お役に立てない気がする。私は皆みたいに計算が得意なわけでもないし。「んー…」と考え込んでいると、「ただ各委員会が使った金額を計算するだけで良いんです!!」「お願いします!!」と二人に頭を下げられてしまった。こんなに可愛い二人にお願いされちゃったらなあ……。



「良いよ、こんなんで良かったら」
「ほ、本当ですか!!?」
「うん。……あ、でも、私、そろばん使えないよ?」



私の言葉に、団蔵と左吉が固まった。しかも、真っ白になってしまっている。せめて電卓があればなあ……。そんな事を考えつつ、辺りを見渡す。当然だが電卓は見当たらない。自分の着ている着物の中も探ってみる。ふと、釣竿型宝貝へと目がいった。……あ、そうじゃん。



「太公望殿、電卓になれたりとかする?」
《ああ、なれる》



釣竿型宝貝が喋ったことにより、団蔵と佐吉が「釣竿が喋った!!?」と驚いている。私は慌てて「驚かせちゃってごめんね」と苦笑しながら謝る。「じゃあ太公望殿、手伝う時には電卓になってね」というと、渋々ながらも「良いだろう」と言ってくれた。よっしゃ。太公望殿との会話を終え、二人に「大丈夫、手伝えるよ」とだけ報告する。すると、二人はハッとして、目を輝かせた。あれ、さっきの驚きはどこにいった。



「ありがとうございます!! 本当にありがとうございます!!」
「じゃあ、また後で迎えに来ますね!!」
「はーい」



「では!!」と部屋を出て行く二人に、私は笑顔で手を振る。徹夜続きだというのに元気だなあ。結構慣れてんのかな?「いやはや、子供は可愛いねえ」と太公望殿に話しかけると、「犯罪になるようなことはするなよ」と言われてしまった。失礼な。ただ子供が好きなだけなのに。太公望殿と話していたら、なんだか眠くなってきた。団蔵と左吉が”迎えに来る”って言ってたし、それまで寝てようかな。



「――…太公望殿、おやすみ」
《――…ああ》

 
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