第8話


ある日、俺達は学園長先生に庭に呼び出された。
周りが「また突然の思いつきか?」「勘弁してくれよ」などと話している。しかし、何故か先生方の様子がおかしい。どことなく、そわそわしているような……。学園長先生の話の内容は、信じ難いものだった。”天の使い”? ”忍術学園を救う”? とても、「はい、そうですか」と受け流せるものではなかった。



「――朝司達、こっちに来なさい」



学園長が誰かを呼んだ。しかも複数。そこで初めて、俺は氷室家の顔を見た。一番最後に現れた女。名前を”小雪”と言っていた。俺は何故か、その女の顔を見てドキドキが止まらなくなった。まさか……、と妙に不安が襲う。気づけば俺は…――、



「――あの!!」



あの女に声をかけてしまっていた。当然、周りは驚いて俺の顔を見る。やべ、やっちまった。だが……、口は閉じてくれないらしい。「し、失礼ですが、年齢は……?」だなんて聞いてしまい、俺自身も戸惑う。反応を待っていると、「えっと、18……」と戸惑い気味に答えた女。俺の年齢は14で、女の年齢は18。4歳という差。俺は「18!?」と驚き、すぐに落ち込んだ。同い年くらいかと思っていたのに、4歳も年上とは……。



「ハチ、どうしたのだ?」



気づけば学園長の話は終わっていて、級友である兵助達が俺を心配そうに見ていた。ふと小雪さんを見ると、小雪さんは「シナ先生、お茶しましょー!」と山本シナ先生に手を振っていた。くっ……、凄く可愛く見える……!!



「ははーん……、そういうことか」
「え、なにが?」



三郎がニヤニヤしている。まさか、感づかれたか……!!?



「ハチ、お前、あの女に惚れたな?」



うっわ!! バレてやがる……!! 兵助達は驚いて固まっている。俺は思わずビクッと反応してしまった。それにより、三郎のニヤニヤがより増す。ちくしょう、腹立つ。



「へえ、こんなハチにも春が……」
「おま、どういう意味だよソレ!!」
「そのままの意味ー」



勘右衛門の言葉に、俺は勘右衛門を睨む。が、当の本人はニヤニヤしながら俺を見ていて効果はないようだ。その後、俺は三郎と勘右衛門にからかわれまくった。



 ***




夕餉の時間になり、皆と一緒に食堂に来た。人はまだ少なかった。俺はハンバーグ定食を選んだ。皆で定食を食べていると…――、



「おい、ハチ」
「あ? なんだよ?」
「あそこ、見てみろ」



三郎が俺を呼んだ。顎でクイッとさされた所に目を向ける。そこには、「あ、凄ぇ。タカ丸と私の食べたいやつだ」「こんな偶然もあるんだねぇ!!」と会話をする小雪さんとタカ丸さん。そして、後ろには綾部、平、田村の三人。俺は動揺して「え!? え!?」ときょどる。俺の姿に三郎が吹いていたが、今はそれどころではない。



「ありゃま、四年生に先越されちゃったなー」



勘右衛門の言葉に、俺は「う、うるせっ!!」と勘右衛門を睨む。気づけば、小雪さんが綾部とタカ丸さんに手を握られていた。自然と眉間に皺が寄るの。うっわ、俺ってば情けねぇ。まだ負けたわけじゃねぇのに、年下に嫉妬かよ。タカ丸さんは年上だけど。……でも、小雪さんと四年生が仲が良いのは事実だ。



「一目惚れなの?」
「あー…、よく分かんね。でも、多分そう」
「ハチの恋は実らなそうだな」
「お前それは酷ぇよ!!」



食堂に小雪さんが居るということに気づいてしまってから、何故か視線が小雪さんの方へ行ってしまう。小雪さんは通りかかった柊さんと話をしてから、再び夕餉へ目を向けた。



もぐもぐ。ゴクン。
「美味で御座る」



思わず、バッ、と手で顔を覆った。その瞬間、兵助達が吃驚していたけど気にしねぇ。三郎が呆れながら「お前、結構重症だな……」と言った。



「どうしよ、小雪さんが妖精に見えて仕方ねぇっ……」
「何故妖精」
「時々ハチの考えてることが分からないよ」
「やっぱりハチの恋は実らないな」
「ま、まだ分かんねぇだろ!! これから進展するかもしれねぇだろ!!」



兵助の言葉に、俺は抗議をする。だが、四人は何故か俺の言葉を聞いて目を背けやがった。おい、なんでだよ。



「無理そうだよね……」
「ヘタレだもの。ハチはヘタレだもの」
「告白が向こうからなら実りそうだな」
「いや、それは有り得ないだろう……」



泣いてもいいですか。

 
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