19
お登勢さん達が帰ると聞き、俺達はグラウンドへと向かった。グラウンドに着くと、お登勢さん達と坂田真白、そして高杉という男が固まって立っていた。その近くには、学園長先生と雑渡昆奈門の姿。本当に帰るのか、と思ってしまった。
「じゃあ、一足先に行くよ」 「アンタ、ちゃんと帰ってきなさいよ」 「じゃないと、アニキ達が困りますから」 「ああ、分かってるって」
会話をし終えた後、高杉さんが持っていたカラクリらしき物をお登勢さん達に向けた。その途端、お登勢さん達は赤い光に包まれ、光が消えた頃には姿を消していた。そのことに、周りは、ザワザワ、と少し騒がしくなる。「次は俺達だな」「ああ」と会話をする高杉さんと坂田。 ……待てよ。おい、待ってくれよ。俺は、まだお前と……。
「坂田真白ッ!!!!」
気づけば、叫んでいた。そのことに少し驚いたけれど、流れでどうにかするしかねぇ。坂田は、俺の声に「うおっ!!?」と驚きつつも、俺に顔を向けた。いや、俺に顔を向けたのは坂田だけではなく、他の奴等もだ。
「なんだ、食満留君じゃーん。なに、見送り?」 「違ぇよ!! つか食満だっつの!!」 「じゃあ何よー?」 「っ俺と!! 俺と、勝負しやがれッ!!!」
勝負は、まだついたわけじゃねぇ。だから、坂田が帰る前に、決着をつけるんだ。じゃねぇと、絶対に後悔する。坂田はじっと俺を見て、少し笑みを浮かべて「良いぜ」と言った。
「お互い手加減無しの本気勝負だ。異論はねェな?」 「お、おう!!」
まさか、すんなり了承を貰えるとは思わなかった。少し驚いてしまったが、それと同時に嬉しさが込み上げてくる。俺は懐から鉄双節棍を取り出し、坂田の前に出る。坂田は、腰にぶら下げている木刀を抜き、俺の目を見て木刀を構える。その目が真剣で、俺はゴクリと唾を飲みこむ。「行くぜ?」と聞かれ、「ああ」と頷く。坂田が俺の返事を聞いて、俺に向かって走り出した。俺も、同時に坂田に向かって走り出す。お互いに雄叫びをあげ、それぞれの武器を振り上げる。
――ッキィン!! 「っつ……!!」
気づけば、首元には坂田の木刀の剣先が向けられていた。俺の武器である鉄双節棍は、地面に落ちている。坂田を見れば、ニヤリ、と俺を見て笑みを浮かべている。なんつー腹立つ笑み。少しイラついていると、坂田は俺から木刀を退けた。
「私の勝ちだな」 「……ここまで差が付いてると逆に清々しいぜ」
嫌味たっぷりで言ったが、坂田はどうってことないように「だな」と笑みを浮かべた。ほんっとーに腹立つ。でも、スッキリした。
「お前は俺の目標だ」 「は……? どうした? デレたのか?」 「うるせぇ、早く帰りやがれ」 「次はツンか」
「ちぇー」と口を尖らせる坂田。そんな坂田を見て、俺は密かに笑みを浮かべた。お前に会えたおかげで、俺はもっと強くなれる気がするよ。……なんて、本人には絶対に言わねぇけどな。坂田に飛ばされた鉄双節棍を拾っていると、「留三郎、ずるいぞ!!」「私達も戦うー!!」と言う文次郎と小平太の声が聞こえた。後ろを振り向ければ、二人だけではなく長次、仙蔵、伊作も居る。……お前等も戦うんかい。
「おー、じゃあ、お前等全員でかかってこい」
ぶっ潰してやんよ。 そう言った坂田に、俺は一生勝てる気がしなかった。
|