15


土井先生が動揺して、「ど、どどどどどうし……!? え、ちょ、待っ……!?」と言葉にならない言葉を発している。私は説得を試みる。二人が出て行った一週間。節約がつらかったり、夜が怖かったりで、二人が恋しくなった。そのことを土井先生に伝えると、ため息をついて「学園長先生と話さないとな」と言ってくれた。その言葉に「イエーイ!」ときり丸とハイタッチする私。土井先生は、その光景に苦笑している。



「あ、そうだ。秋奈ちゃん、入門票にサイン!」
「あー…、土井先生書いてー」
「ったく、仕方ないな」



土井先生が綺麗な字で入門票に私の名前を書く。土井先生の字、凄く好きだな。「ふへへ」と笑うと、土井先生に「気持ち悪い」と言われてしまった。最近なんだか私の扱いが酷いよ泣くよ!!



「じゃあ、私は学園長先生に話をつけてくる。秋奈、大人しく待ってるんだぞ」
「分かってるよ。そんなに心配しなくても……」
「何も言わずにここに来たのは誰だったかなー?」
「あっははー! 大人しく待ってまーす!!」



黒笑を浮かべる土井先生。今の土井先生に逆らったら殺される……。私がビクビクしてる間にも、土井先生は学園長先生の元へと行ってしまった。土井先生の背中を見送っていると、きり丸が「秋奈姉」と私を呼んだ。「ん?」ときり丸に顔を向けると、「乱太郎たち、紹介するね!!」と可愛らしく言う。どうしよう抱きしめたい。



「はーい! 私は一年は組の猪名寺乱太郎でーす!!」
「はいはーい! 同じく一年は組の福富しんベヱでーす!!」
「「よろしくお願いしまぁーす!!」」



やばい、ちょ、可愛い、どうしよ、天使かこの子達。



「六年い組の立花仙蔵だ、よろしく」
「六年は組の善法寺伊作です、よろしくお願いしますね」



善法寺伊作まで紹介が終わり、私も「よろしくお願いします」と言う。その時、七松小平太も「私もよろしくなー!!」と元気よく言った。あ、一応私も自己紹介しとこっかな。念のために。



「一応言っておきますね。天道秋奈、17歳です」



ペコ、と軽く頭を下げ、頭を上げる。……だが、何故か皆驚いた表情のまま動かない。そのことに「どうかしました?」と聞くと、立花が「と、年上?」と私を指さす。こらこら、人を指ささない。逆に「何歳だと思ってたんですか?」と聞くと、善法寺が遠慮がちに「13歳くらい……」と言う。……泣きたい。どうしてくれる、この悲しさ。



「おお、どおりで少し大きかったわけだ!!」
「ちょ、あなた喋らないでくれますか!!?」



七松の発言に思わずそう言うと、きり丸が「七松先輩すごっ!! 早くも秋奈姉が心を開いている!!」と言った。きり丸それ違う。心の中で言っていると、七松が「なんだ、そんなに私が好きか!!」と見当違いなことを言った。その言葉に「違います!!」と否定する。



「私より年上なのだから、呼び捨てと敬語無しで良いんだぞ?」
「せめて会話を成立させようか!!?」


なんだコレ。早くも疲れているのだけれど。……隅の方で笑いを堪えている乱太郎達は気にしないよ。絶対に。



「あ、年上なら小平太の言うとおり、呼び捨てと敬語無しで良いですよ」



善法寺の言葉に、「御言葉に甘えて」と返事をする。それから、「私のことも是非それで」と付け加える。善法寺は躊躇したものの、頷いてくれた。まあ、元々敬語使われるのってなんだか慣れないし。あ、別に皆から馬鹿にされてるわけじゃないんだよ。私の周りにはフレンドリーな子が多かっただけで。



「私は既に敬語なんて使ってないがな!!」
「アンタは年上を敬うことを知ろうか」



「仲良くなれば問題ない!!」などと、自信満々に言う七松は放置しよう。コイツの相手をするの疲れた。つい暴言を吐いてしまう。疲れた。



「そういえば立花先輩、なんで秋奈さんを襲ったんですか?」
「何!!? 犯したのか!!?」
「っ違う!! そっちじゃない!!」



コホンッ、と咳払いをする立花。うわー…、苦労人だな。私も人のこと言えないな。これから何が起こるか分からないし。……頼むから、変な問題に巻き込むなよ。



「げ、原因はその白いのだ!」



そう言って指さされたのはマスクだった。




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