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廊下から姿を現したのは、土井先生だった。土井先生の後ろには六年生である七松小平太もいた。七松小平太が土井先生を呼んできてくれたのだろうか。「あ、土井先生」と言うと、土井先生は慌てた様子で「首の怪我は大丈夫か!!?」と聞いてきた。



「たいした傷じゃないよ、かすり傷だから」
「そ、そうか……。七松にお前が首に怪我をした、と聞いたときは相当焦ったんだからな」



「無事ならそれに越したことは無いけどな」と言う土井先生。そんなに心配してくれたのか。私は嬉しくて「でへ」と笑う。そしたら土井先生に無言で頭を叩かれてしまった。酷い人。



「じー」
「……」
「じ――」
「…………」
「じ―――」
「………………」



なぜか先程からジロジロと見られている……。チラッ、と相手を見ると、ニカッ、と満面の笑みを浮かべられた。と、ズカズカと私の前まで来て、ズイッと顔を近づけてきた。



「オイお前ッ!!」
「っひ!! ごめんなさい何でしょうかァァア!!?」



相手がいきなり大声を出してきた為、びっくりして何故か謝ってしまった。そんな私に、七松小平太は「ん?なんで謝るんだ?」とキョトンとしながら聞いてきた。その言葉に「声でかいんだよ」と文句を言いたいけれど初対面相手に言えるはずがない。



「私は七松小平太だ!!」
「え、あ……、天道秋奈といいます……」
「おお!! 良い名だな!!」
「あ、ありがとうございます」



あまりの顔の近さに、うまく笑顔を浮かべることができない。そろそろ顔を遠ざけてくれないだろうか。……この人の性格からすると無理そうだなあ……。ブスが余計にブスに見えるから、間近で見ないでほしいのだけれど……。



――むにっ
「……へ……?」



その時、胸になにかの感触がした。私は一瞬で分かってしまった。分かりたくなかった。七松小平太の手が、私の胸に触れている。そのことに驚きやらショックやらで固まってしまう。そんな私には気づかず、七松小平太は「見た目よりはデカいな」などと呟いた。



「こっ……、小平太ァァァァアアアアア!!!!!」



七松小平太の言動に、土井先生が激怒した。隠し持っていたチョークで七松小平太を攻撃するが、軽々と避けられてしまっている。そのまま、土井先生と七松小平太の鬼ごっこが始まった。



「嫁入り前の秋奈に不埒なことをしおってェェェエエエエ!!!!」
「うおっ!? あぶっ、危なっ……!!」



私はその場で赤面して固まる。初対面の人に、親しくない人に、恋人でもない人に、胸を触られてしまった……。「お、お嫁にいけないっ」と、顔を手で覆って俯く私。胸を触られた上、こんな大勢の目の前で……。そんな私の様子に、きり丸も善法寺伊作や立花仙蔵達も私をフォローしてくれる。けれど、今はその優しさが痛い。



「そういえば秋奈、なんで忍術学園に来たんだ?」



その時、妙にスッキリした表情の土井先生が現れ、そう聞いてきた。庭をチラッと見ると、ボロボロで倒れている七松小平太の姿。瞬殺だったようだ。そのことに口角を引き攣らせつつ、私は土井先生に顔を向けて、



「――土井先生、私をここに置いてもらうことってできない?」



と聞く。私の言葉に、土井先生が「はあ!?」と声をあげて驚いている。きり丸は「マジ!?」と目を輝かせた。おお、予想通りの反応。




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