Act.05

土曜日
私は夏菜や仁王に宣言した通り、朝起きてからずっとリビングでテレビゲームをやっている。ゲームというのは、まあ何とも飽きないもので。更には、他にやっているゲームをプレイ中に新しいゲームが発売されるものだから、まあゲームをやらない日はあまり無いだろう。



「希代、お昼何が食べたい?」



集中しながらテレビゲームをやっていると、お母さんがそう話しかけてきた。お母さんに顔を向けずにゲームをやりながら「んー……」と考えを巡らせる。でも、特にこれが食べたいという料理は浮かばない。



「なんでも良いよ」
「そう、じゃあ残り物で良いか。夕飯は?」
「なんでもー」
「もう、そればっかり」



適当な私の返事に、お母さんは少し怒りながらも台所のほうへ歩いて行った。その時調度、ラインの鳴る音が聞こえた。学校に居る時はマナーモードにしているが、家にいる時は音を出している。ゲームを一旦止めて、ラインを開いて誰から来たのか確かめると、そこには「におー」の文字。



「…………」



オイちょっと待て。
そっとラインを閉じ、額に手を当てながら俯く。恐らく「におー」というのは、私のクラスメイトである「仁王雅治」のことで間違いはないだろう。確かに私と仁王は程々に仲良くなったかもしれない。だが、ラインのIDを交換した覚えは全くない。っていうか交換していない。何故仁王から……。



「希代? どうかした?」
「ううん、なんでもない」
「そう?」



お母さんに心配され、額に手を当てられる。冷たいお母さんの手が妙に気持ち良かったが、「熱はないね」というお母さんの言葉と共に、その手は私の額から退けられた。お母さんは熱がないことに安心したのか、再び台所へと向かう。
「さて、」と心の中で思いながら、再びラインを開く。仁王から送られてきた文を見ると、「城阪からID聞いた! 皆のアイドル・仁王雅治ぜよ☆」と書かれていた。
やべぇ無視してぇ……。夏菜も何教えてんだ……。



≪皆の王子・御剣希代です☆今日は夏菜のこと面倒見てあげてちょ☆≫



我ながらウザいけど、まあ、こんな感じで良いか。ノリはノリで返すべし。「えいや」と掛け声をあげながら、書き込んだ文を送る。送れたことを確認すると、すぐに文章の左に既読文字がついた。え、早っ。



≪御剣は皆の王子じゃなくて城阪の王子ぜよ!!!!≫



…………うん、ツッコむべきはそこじゃない。思わず「はあ」と溜め息をつき、どう返事をすべきか悩む。ボケをツッコミで返すか、ツッコミをボケで返すか、冷めた反応をするか、とりあえず笑っておくか。……よし、とりあえず反応して、別の話題を振るか。



≪ツッコミそこじゃねぇwwwそういえば部活は?≫
≪今は休憩中ナリ!≫



へえ、休憩中なのか。返事を返そうとしていると、仁王から写真が送られてきた。文字を打つのをやめて写真をタップすると、写真がドアップで出てきた。そこには、タオルを渡している夏菜と、それを受け取る幸村君の姿。二人は楽しそうに何かを話しているようだ。私は慌てて、打ち途中だった文字を全消しし、新たに文字を打つ。



≪これどういうことですん!!?どういうことですん!!?二人は付き合ってるんですん!!?≫



焦っているのが丸わかりの文章を送ると、またすぐに既読文字がついた。そして、送られてきた文は……、



≪プリッ≫



この一言のみ。「は?」と思いながら、また何か送ってくるのではないか、としばらく待つ。けれど、「プリッ」以降が何も送られてこない。お、オイィィイ! プリッってなんだよ! 「はい」って意味なの「いいえ」って意味なのどっちなの!? なんで詳しいこと送ってこないんだよォオオ!



≪!!?≫



なんて返して良いか、まず返すべきなのかどうか迷いながらも、今一番の気持ちを送る。「仁王早く返事しろ」なんて思っていると、既読文字がつき、返事が来た。



≪知りたいなら来るべきじゃ! さあ、今すぐ!≫



な ん と 。ど、どうしよ……。夏菜と幸村君について知りたいけど、今から学校に行かなきゃいけないのか。今日は休日とはいえ、テニス部のファンがいたら怖いな。あー、や、でも、夏菜……、いやいやファン……。…………、



≪今すぐ行かせてもらいます≫



思わず送ってしまった文。こうなったら腹を括って行くしかない。



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