Act.04

数学、理科、日本史ときて、四時限目は体育。
日本史の授業が終わって少し経つと、クラスメイト達が「次体育だから着替えに行こー」と言いながら、体操着の入った袋を持ちながら教室を出て行く。私もそろそろ行かなきゃなあ、と思い、夏菜に「着替えに行こ」と話しかける。夏菜は「あ、そうだね。行こっか」と言いながら笑みを浮かべた。



「お腹が空いた時に体育って酷いよね」
「ね、お腹鳴りすぎて気持ち悪くなりそう」



女子更衣室で四時限目が体育ということに文句を言いつつ、せっせと体操着に着替える。まだまだ温かい気温により、半袖半ズボンの体操着。制服のときと違って動きやすい。




 ***




「まあ、ルールはこんな感じだな。授業だから本格的にはやらないから初心者に嬉しいソフトテニスだ」



ルールというのは、どちらかが5回勝てば良いともの。本当に簡単なルールで、私でも出来るソフトテニスだ。どうやらトーナメント戦らしく、体育を担当している先生の後ろには、持ち運びができるホワイトボードにトーナメント式の絵が描かれている。



「ダブルスでやるからな。今から男女二組ペアを作ってくれ。ラケットは此処にあるからペア組んだら取りに来いよ」



先生の言葉に、クラスメイト達がわらわらと動き出す。人気者の丸井と仁王の元には五、六人の女子が駆け寄って「一緒にやらない?」と声をかけている。だが、男女二組ペアということで、何人かは断られるだろう。さて、私は誰と組もうか……。女子同士だったら迷わず夏菜と組んでいたのに。



「御剣、一緒にやらねー?」
「おー藤沢、良いよー」



クラスの男子で一番仲が良い藤沢が声をかけてくれた。笑顔で許可すると、彼はニカッと笑みを浮かべながら「さんきゅ」とお礼を言った。ふと夏菜を探して見つけると、名前は忘れたけど人の良さそうな顔をした男子と一緒にいた。多分彼とペアを組むのだろう。



「御剣、テニスってやったことある?」
「ミントンならあるよ。テニスは初めてやる」
「だよなあ。俺も小さい頃からサッカー一筋だから、テニスやったことねぇんだ」
「あ、じゃあ負けるね」
「アッサリ言うなよ……」



負け腰の私に、藤沢は呆れた表情で私を見る。けれど、ボリボリと頭を掻きながら、いまだに数人の女子に囲まれている丸井と仁王を見て、面倒くさそうに口を開いた。



「でも確かに、テニス部レギュラーの二人がいたんじゃ勝てそうにもねーな」
「でしょ。あ、ラケット取りに行こ」
「ああ」



藤沢と肩を並べて、先生の横にいるラケットを取りに行く。私と藤沢がそれぞれラケットを取ると、先生が私達に声をかけた。どうやらあみだくじで対戦相手を決めるらしく、好きなスタート位置に二人の名前を書くように言われた。



「適当で良いか?」
「うん、どこでも」



藤沢は私に確認を取ると、適当な空いている箇所に「藤沢&御剣」と書いた。藤沢は字が上手なほうで、正直既に書かれているのクラスメイト達の文字よりも読みやすくて形も整っている。ラケットも持ったし、名前も書いたし、私と藤沢は先生の元から少し離れた場所に移動した。



「そういえば、今朝仁王と仲良さそうに話してたな。お前仁王のこと苦手って言ってなかったっけ?」
「それがさ、話してみたら全然クールでも一匹狼でもなかったんだよ。藤沢も話してみ? ああ見えて人見知りだからさ」



私の言葉に、藤沢は「えー?」と言いながら微妙な顔をする。藤沢も、以前の私と同じように仁王が苦手らしい。理由は近寄りがたい雰囲気がするから、とのこと。それに関して私も賛同したことがあるが、今となっては賛同できなくなった。ちゃんと話してみれば、藤沢も私と同じように考えると思うよ。



「でもさ、仁王って女子にモテるじゃん? 俺モテねぇからモテる奴見るとぶん殴りたくなるんだよね」
「さりげなく自虐ネタと怖いこと言うなよ。あ、でも丸井とは仲良いよね」
「アイツ超良い奴だぜ。モテるとか意識できねぇくらいに」
「へぇー」



コイツの頭ん中一体どうなってんだ。



「よし、全員決まったな。じゃあAコートとBコート使ってトーナメントやってくぞー」



先生の声が聞こえ、私と藤沢は話すのをやめて先生の方へと顔を迎える。既にあみだくじの結果は出たようで、ホワイトボードにはクラスメイト全員の苗字が書いてあった。私と藤沢は先生の話を聞きながら、自分達の苗字を探す。



「あ、見つけた」
「お? どこ?」
「ほら、一番端の。対戦相手は、――……丸井のペア」
「……マジで?」



「藤沢&御剣」と書かれた文字の横には、確かに「丸井&平川」の文字。手で目を擦ってちゃんと見ても、それは変わらない。ギギギ、と壊れかけた機械のように藤沢を見ると、藤沢もゆっくり私を見た。お互いに口角が引き攣っていて、顔は絶望全開。



結果、当然いとも簡単に負けました。



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