Act.16

二日目、三日目は順調に決まった。あとは四日目から六日目まで。メインが豆腐ハンバーグ、焼き肉、ときたから、次のメインは魚が無難だろうか。柳君曰く「うちは肉好きが多い」ってことだし、魚を好まない人が多いのかもしれない。でも、バランスを考えたら魚食べたほうが良いよなあ……。



「二日続いて肉類ですから、魚はどうでしょうか?」



私と同じことを考えていたのか、柳生君がそう言った。柳生君の言葉を聞き、仁王は「えー」と不満を口にし、真田君は眉をピクリと動かした。いや、でも栄養バランスを考えるとね、魚を食べないとね。



「魚か、良いね。城阪さん、魚の中で一番好きなのは?」
「え? えっと、鮭かな」
「じゃあ鮭にしよう」



……幸村君の決め方が単純というか、夏菜中心というか。ちょっと複雑だけれど、魚になったから良しとしよう。私も鮭好きだしね。魚だし味噌汁と漬物もつけとけば良いんじゃないかな。



「魚ですし味噌汁と……、あ、キュウリの漬物はいかがでしょう?」



柳生君んんんん! 柳生君気付いてないけど以心伝心みたいだよ!
内心感動していると、幸村君が柳生君の言った味噌汁とキュウリの漬物をメモしていく。これで四日目終了。その時、夏菜が何気なく「肉じゃが食べたいなあ」と呟いた。その声を聞きとった幸村君が「五日目は肉じゃがにしよっか」とあっさりと決めて、メモに書いてしまった。肉じゃが私も好きだけど、今の瞬時の決め方はなんなんだ。



「部長、俺豚汁食べたいッス」
「ブンちゃん共食いじゃ」
「テメェ殴るぞ」



「豚汁」という言葉に反応して仁王が困った表情で言うと、丸井が拳を作る。けれど、仁王はそんなことどうってことないようで「キャー」とわざとらしく悲鳴をあげた。まあ、あの二人は放っておいて良いか。



「豚汁と、あとはサラダでもつけておこうか」
「はいッス!」



笑みを浮かべながら言う幸村君に、切原君が元気よく返事をする。可愛いな。五日目が終了したところで、丸井が「グラタン!」と言った。どうやらグラタンが食べたいようだ。……そういえばグラタン最近食べてないな……。グラタンを頭に思い浮かべていると、幸村君が丸井の意見に同意したのかメモ帳に「グラタン」と書いていた。



「グラタンなら他にいらないよね。ってことは、これで献立考えるのは終わったわけだ」



そう言い、幸村君はメモ帳をポケットにしまう。丸井と切原君は「楽しみだなー!」「でも作るのだるいッスよ」と会話をしている。っていうか皆料理出来るのかな……。私は人並みだけど、夏菜は教えれば出来るけどちょっと下手だし、サポート出来るかどうか……。



「御剣、」



名前を呼ばれて、「んー?」と言いつつそちらへ顔を向ける。私の名前を呼んだ桑原君は「おらよ」と言って手を差し伸べた。桑原君の手のひらを見ると、そこにはミルクの飴が五つくらいあった。……なんで飴? そしてなんで私?



「この前ノート運ぶの手伝ってくれた礼だ。こんなんで悪いけど、受け取ってくれ」
「ああ、そういうこと。ありがたく受け取るよ」



律儀な桑原君に笑みを浮かべながら、私は桑原君の手に乗ったミルクの飴を手に取る。こんなん、と桑原君は言うけれど、私はこのミルクの飴が好きだ。甘いし美味しい。最近食べていなかったからそろそろ食べたいと思っていた為、凄く嬉しい。タダ程安いものはない。



「あっ、御剣ずりぃ! ジャッカル、俺にも飴!」



先程まで切原君と会話をしていた丸井が、いきなり割って入ってきてそう言った。その言葉を聞き、桑原君は呆れながら「お前は俺に何もしてくれてねぇだろうが」と言う。だが丸井はどうしても飴が欲しいようで、「じゃあ御剣、その飴ひとつでも良いからくれ!」と言ってきた。どんだけ食い意地はってんだよ。



「嫌だよ、これは私の」
「えーっ! ずりぃよずりぃーっ!」
「子供か」



拒否った瞬間、小さい子供のように駄々をこね始めた丸井。お前高校三年生だろうが。



「そういえば、学校結構集まってるけど、一体何校集まるの?」



ふとした疑問を桑原君と丸井に聞く。丸井はいまだに私の手に持っているミルクの飴に目が行っているけれど、口では「お前知らないのかよぃ?」と言っている。私が渡された資料ではどこの学校が合宿に参加するなんてこと書いていなかった気がする。ちゃんと見てないから定かではないけれど。あ、でも氷帝学園は夏菜から聞いて参加すること知ってた。



「俺達立海、東京の氷帝と青学と不動峰に山吹に聖ルドルフ、千葉の六角、大阪の四天宝寺、沖縄の比嘉。九校集まることになるな」
「……えっ、多すぎない?」



桑原君の言葉に、私は若干固まる。私の言葉を聞き、桑原君は苦笑して「マネージャーは大変そうだな」と言った。確かに、マネージャーが多くなければ、こんな大勢の男達をサポートしていけない。……おい、ちょっと待てよ。マネージャーってもしかして、女子だけじゃなくて男子もいる?



「……帰って良い?」
「駄目に決まってんだろぃ」



青ざめる私はそう言うけれど、丸井はキッパリとそう言った。うっ、今すぐにでも逃げ出したい。「そんなー…」と両手で顔を覆うと、桑原君が私の肩を優しくポンポンと叩いて「まあまあ、俺達もフォローするから」と慰めてくれた。桑原君優しい。



「……夏菜、狙われないと良いんだけど……」
「そこかよ」



本当はそこだけじゃないんだけど。桑原君のツッコミを聞き、私は柳君と話している夏菜を見る。夏菜は結構隙あるし無防備だし、ほわほわしてるから余計に声をかけられるんじゃないだろうか。学校では私がいつも隣にいるけれど、マネージャーの仕事をしているときは分担があるだろうから、常に一緒とは限らないし……。



「確かに城阪はお前と違って女っぽいよな」
「丸井殴るよ」



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