Act.15

とりあえず立海は荷物を置いてこい、と跡部様に言われたため、部長である幸村君の指示に従って移動した。合宿所はほぼ高級ホテルのような物件で、テニスコート、サッカーコート、野球グラウンド等々、ありとあらゆるスポーツが出来るようになっているみたいだ。跡部様凄ぇ。イケメン。



「此処か」
「みたいだね」



私と夏菜の他にも女の子のマネージャーが何人かいるようだが、私と夏菜の二人で一部屋らしい。女子マネージャーの階は男子達と同じ階にならないように三階にある。私達の部屋は三階の部屋の左から二番目、302号室だ。



「よし、開けるよ。準備は良い?」
「お、おう……、これでキラキラした金箔の部屋だったらどうしよう……」
「いや、さすがに跡部様でもそこまで……、いや、分からんな……」



夏菜が変なことを言うものだから、金箔の部屋を思い浮かべてしまった。いやいやいや、そんな、豊臣秀吉じゃないんだから。私は302号室のドアノブに触れ、ゴクン、と唾を飲み込む。そして、「えいやっ!!」と勢いよくドアを開ける。



「……おお……」
「…………」



部屋の中を見ると、部屋は金箔ではなくて清潔そうな白を基本とした部屋だった。夏菜と一緒の部屋の中に入ると、その部屋がいかに広いかよく分かる。ふかふかそうなベッドな二つあり、大きな机とふわふわそうなソファもあり、大きなクローゼットもあり、壁に埋め込まれているテレビがあり、壁にかけられている絵画もあり。……なんというか、次元が違いすぎて此処にいるのがおこがましい気がする。



「一週間この部屋で過ごすのか……」
「なんかあたし達凄いところに入り込んじゃったね……」



思わず夏菜と一緒に遠い目をしてしまう。跡部様どんだけ金持ちなんだよ。「ま、まあ、今は荷物置いて皆がいる外に行こうか」と言う夏菜の言葉に「うん」と頷き、自分が持っている荷物を邪魔にならない場所にまとめて置いておく。




 ***




夏菜と外に向かうと、幸村君達や氷帝学園だけではなく、何校かの知らない学校の生徒達もいた。私達が荷物を置いてきている間に到着したようだ。幸村君は真田君や柳君、浦山君と話していたが、私達に気付くとニコッと微笑み、「おいで」と手招きをした。私も夏菜もそれに従い、幸村君の元に行く。



「昼食のことなんだけど、明日から五日間は昼食を学校事で作って食べるようにするみたいなんだ。最終日はバイキングらしいけど。でも献立が決まらなくてね……」



ふむ、どうやら献立を考える為に呼ばれたらしい。隣にいる夏菜は「皆の好きな食べ物はどう?」と提案するけれど、柳君が「うちは肉好きが多いから偏ってしまう」と返事する。確かに偏ると体に悪いし、なるべくバランス良く栄養のある献立にしなければならないな。



「そうだ、御剣は普段母親の手伝いで夕飯を作ることがあったな。御剣ならどうする?」
「どこからその情報得たの怖いよ」



柳君の言葉に、私は思わず青ざめた表情で引く。なんで柳君はいつもいつも「その情報どこで知ったの?」っていう情報ばかり知っているの。柳君の言葉を聞き、真田君が「うむ、親孝行だな」と感心そうに頷き、浦山君は「凄いでヤンス!」と尊敬の眼差しを向けた。真田君も浦山君もなんで柳君のストーカーにも似たとんでも発言をスルー出来るの。



「ってわけで御剣さん、何かある?」
「え、あー、そうだな……、豆腐ハンバーグ、とか?」



私の言葉に、真田君が「豆腐ハンバーグ?」と首を傾げる。えっ、豆腐ハンバーグ知らないの。私は慌てて「ひき肉と豆腐を混ぜたハンバーグだよ」と説明する。簡単な説明に真田君は納得した。



「じゃあ明日は豆腐ハンバーグをメインね。後は白米と味噌汁と……、」
「キャベツの千切りとかプチトマトとかでも添えとけば結構良いと思う」
「うん、そうだね。よし、これで明日の献立はバッチリだ」



幸村君はひとつひとつをメモ帳にメモしていく。こっそり覗くと、幸村君の字はそれはそれは美しく見やすい字だった。美しい人は字まで美しいのか。関心していると、背後から「何してんだよぃ?」と言う丸井の声が聞こえた。幸村君達と一緒に振り向くと、案の定そこには丸井。それから仁王、桑原君、柳生君、切原君までいた。



「明日からの昼食の献立を考えていたんだ。二日目は決まったから、三日目から考えてほしいんだけど」



幸村君の言葉を聞き、丸井が「はいはーいっ!」と元気良く手を上げる。幸村君はそんな丸井を微笑ましそうに見て「なんだい?」と聞く。すると、丸井は「肉食いてぇ!」とと言う。もうちょい具体的に言いなさいよ。



「御剣が”もっと具体的に言え”と思っている確率97%」



柳君の言葉に、丸井がジト目で私を見る。私はすぐさま目線を逸らし、知らぬ顔をする。といっても、柳君が97%と言ってしまった時点で言い逃れは出来ないだろう。実際に事実だし。っていうか柳君余計なこと言わないでよ。そう思った瞬間、何故か柳君の目が見開いて私を視線で捕えた為、瞬時に視線をずらした。



「肉なら普通に焼いて焼肉のたれでもかければ美味しいよね」
「うむ、たまらん!」



笑顔で言う夏菜の言葉に、真田君が大きく頷く。ああ、確かにそれ美味しいわ。幸村君は夏菜の言葉に「良いね」と言うと、メモ帳に「三日目」と書き、その下に箇条書きで「肉(焼肉のたれ)」と書く。



「で白米は必要で……、味噌汁は三日目はどうする?」



幸村君の言葉に「うーん」と悩む私。ふと、切原君が目に入った。…………、



「わかめスープ食べたいね」
「っ先輩今俺の頭見て言いましたよね!?」



私がそう言った瞬間、切原君がガシッと私の両肩を掴んでツッコんだ。「いやいやいや、そんなまさか」なんて言いつつ、私の視線は切原君のうねうねしている髪の毛にいっている。切原君は「先輩はネタにしないと思ったのに!」と嘆く。いや、そんなにネタにされてたの。ごめん、なんかほんと。



「じゃあわかめスープで、あとはいっか」
「部長、わかめスープ決定なんスか!?」



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