首輪を解いて、キスをして。
私は夜道を歩く。
相棒が鎖を引いて。
特にこれといった興奮もないし、Hなこともしていないのだけれど、
首輪と鎖で繋がっていて、ナイショの指切りげんまんみたいで、幸せ。
「相棒、どこに行くの?」
私はついていきながら尋ねる。
「自販機で飲み物買ったら帰るよ。」
暫く、首輪をつけて一緒に歩いた。
真っ暗な夜道は誰ともすれ違わない。
「相棒、つながってるね。」
「ああ、俺の首輪と先輩の首、つながってる。」
頬にガーゼを当てた相棒が微笑んだ。
すこし青い部分がはみ出ていた。
ガシャン。と、機械の中で缶の落ちる音。
「はい。」と熱いココアを渡す君。
君の指先は冷たかった。
犬の首輪に鍵をかけて、私たちは歩く。
お互いの鍵を握りながら。
二人で公園に来た。
思わず微笑む私たち。
二人で半分ずつ耳にかけたイヤホンからは機械の歌姫の古い息。
まるで出会った時のような幼く温かい感情に満たされる。
「わんわんわん」
「あははははは」
暫く笑いあいながら、ココアを二人で飲んだ。
「あのね、先輩。もっといいもの巻いてあげる」
相棒が鞄の奥から、マフラーを取り出して、私に巻いてくれた。
「コンビニに行って、先輩の大好きなお菓子を買おうね。」
二人の首輪を隠すように、でも、二人の関係を守るかのように、首輪の上からマフラーを巻いてくれた。
あたたかい。すごくうれしい。
「でもね、」
おうちに帰ったら、首輪を解いてキスしようね?
と、私は言った。君は微笑んでくれた。
「そうだね、帰ったら首輪を解いて、クラムチャウダーを飲もうね。」
[ 13/15 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
白昼夢がお送りします。