キス、していい?

先輩は、カラになったグラスの中を覗いた。
深夜の冷たく澄んだ空気は、透明な水のように染み入ってきた。
しかし、喉は乾いたまま。

ただ今、深夜二時。相棒はブランケットでぐるぐるになって眠っている。

(相変わらずの君が好き)と、先輩は呟いた。

ソファの上の相棒の顔を眺め、そのまま額にキスをした。
「う、」と声が聞こえたが、月明かりだけの部屋に邪魔者は居ない。

「ねえ君、キス、していい?」

相棒の唇に、はちみつ味のリップバームを縫った先輩の唇が重なる。
相棒は一瞬目を見開き、眠たそうに再び目を閉じた。

舌と唇の感触を探りながら、あたたかいところを指で舌で撫でまわす。

「どうしたんだよ、先輩?」

相棒は先輩の肩を持ち、目を暫く見た後、抱きしめた。

「かわいいかわいい俺の先輩。眠れるまで傍にいてあげる。寂しかったからキスしてくれたんだよね?」

しかし先輩は首を振り、「私は相棒が好きだから、我慢できなくて。」と言った。


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