ナツカゼ
先輩が風邪を引いた。俺としては「また今年もか」と今年も思った。
というのも、先輩は夏休みの終わりごろに必ず俺と海に行き、はしゃぐのが毎年の恒例行事だからだ。
今年ばかりは風邪などひかぬように、「今年の海辺にはクラゲがたくさん出るんだって」とか言ってみたりしたのだが、それでも海に入りたいようでうずうずしているのがよくわかった。
いつものバスに乗り、いつものようにICカードをかざす。俺は緑色、先輩はピンク色。いつもの電子音。二人並んで座って、海へ行く。
先輩が窓を開ける。夏の潮風が、バスの中の機械的な冷たさを追い出し、火照った海の熱を運び込む。
「相棒!今年もいい風だよ!」
先輩がはしゃいでるのが可愛くて、嬉しくなってしまった。
「そうだな先輩!今年も走るか!」
バスを降りて、砂浜から海へ叫びながら走った。
今年も海に突っ込んで、ばしゃばしゃと海を弾きながらバカみたいにはしゃいだ。
夜、先輩を家まで送っているとき。
「くしゅん!」
先輩が、また夏風邪を引いた。
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