きみのための柔らかいねむり






「…そんな所で何してるんだい?」


放課後に図書室へと赴き、一番奥にあるソファー席で数冊の本を読み耽っていると、傑が声をかけてきた。


「…読書、かな」
「そう…悟が名前を探していたよ?」
「………そっ、か」


それは知っている、知った上で悟から逃げているのだ。
…おとといの晩、悟と身体を繋げた後から、私は恥ずかしさから悟を避けている。




「…悟の事は、嫌い?」
「………」


聞かれた質問に、首を左右に振って答える。


「じゃあ、すぐには無理でも、そのうち向き合って話してくれるかい?」
「………」

今度は頷いて返事をする。




「あれでも、悟は本気なんだよ。名前の前ではかっこつけているから分からないだろうけど、私に話す内容は、専ら名前に関する事ばかりだからね」
「そ、なんだ……」
「こんな所で二人で話している事が知られたら、私は悟に詰め寄られるだろうね」



クスクスと笑いながら傑はそう言う。私はなんと返事すればいいのか分からず、傑から目を逸らすように視線を本へと向ける。


「名前は本が好きだね。座学も全て満点だし。ここにある本はもう全て読んだのだろう?」
「でも、私はそれくらいしかできないから…」
「すごい事だよ。私にも硝子にも、もちろん悟にも出来ないことだ。みんなの中で、名前が一番知識が豊富だし、一番頭の回転も早い」
「!…そんな事ない、みんなの方がすごいよ…!私は…せめて足手纏いにならないように、色んな事を知っておこうって……それだけだよ」


みんなが凄すぎて、遠くへ行ってしまうようで、私はたまに怖くなる。
それは胸の中に留めたけれど。





「………名前は私が嫌い?」
「そんな事ない!好きだよ!…みんな、いい人達だもん、…傑だって優しくしてくれてるでしょ…?」
「そうか、よかった。なら、そこに隠れている悟にも同じように、名前の気持ちを伝えてくれるかな?」
「…!」




「…何でバラすんだよ」と言いながら、不機嫌そうな悟が本棚の後ろから現れた。


「これ以上嫉妬されては堪らないからね。…健闘を祈っているよ、またね名前」



そう言うと、傑は立ち去って行く。
え、傑、待って!悟と二人きりなんて気まず過ぎる…!やだやだ!待って、傑!すぐる…!








−−−


「…!………名前、名前…!」




悟の声が聞こえてゆっくりと瞼を開けると、心配そうな表情をした悟に見下ろされていた。悟は少し安心した様に私の頬を撫でる。




「ん…?おはよ…いつ帰ってきたの…?」
「さっき。…名前、怖い夢でも見たの?」
「どうして?」
「…泣いてたんだよ、……寝てるのに泣いてたから、心配した」
「えっ?」


悟はホッとした様子で、涙を拭くように私の目尻を撫でる。そういえば、



「ぁ、…怖くないけど、何か、……懐かしい夢だった気がするなぁ」
「懐かしい?」
「うん、そう、…覚えてないけどね」
私はそう言うと、悟に抱きついた。



「……すっ、ごい嫌な感じするんだけど」
「なにが?」
「名前の見てた夢。……分かんないけど、嫉妬しそう」
「ええ?なんで?」
「僕以外で泣いてたんじゃない?ねえ、名前」
「んはは、覚えてないってば」


笑いながらそう言う私に、悟は噛み付くようなキスをした。






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