愛とは甘く痺れる劇毒の事1






勝ち逃げの美学の続きです




仕事を終えると、事務室まで迎えに来た悟に手を引かれて一緒に自宅へと帰る。
悟は私を寝室へと連れて行きベッドに座らせると、ひとりで部屋を出で行った。なんだろう?と疑問に思っていると、悟はすぐに寝室へと戻ってきた。



悟の手には、一年生達から貰ったフリルのエプロンとどこかのお店のビニール袋を持っている。
ビニール袋から取り出したそれは、薄いピンク色をしたガムテープの様なものだった。




「んふふ、」
「あのぉ……」
「ん?はい名前ちゃん、何でしょう?」
「いや、あの……これ、何でしょうか」



ニヤニヤを隠せない様子の悟に、「今日は寝かせてあげられないって言ったでしょ?」と言われた。それについては反論しかないので私も悟に食ってかかる。



「そもそも、私は被害者です」
「……ん?」
「悟が!二年生達に!謎のお弁当マウント取るから!」
「だって〜名前が僕の為に作ってくれたものだも〜ん、嬉しい気持ちからそうしちゃうのは仕方ないでしょ?」
「う、ぐぐぐ」
「終わり?」


ニタニタとする悟を見て、いや!私は何も間違っていない!と自分に言い聞かせ言葉を続ける。



「でも、言い方とかさ、あるでしょう?」
「名前は嫌だった?」
「……え?」
「名前の作ってくれたお弁当を僕が自慢してたらやだ?」
「うっ、」
「勿論名前が嫌なら今後は、絶対に、しない」
「……い、」
「い?」
「い、いや、じゃ、ないです……けどぉ!」
「ほらぁ〜、ね?嬉しかったんでしょ?もぉ〜、名前ったら素直じゃないんだからっ!」



くそぉ、悟のペースに飲み込まれたままだ。この流れはよくないぞ、ここで踏ん張っとかないとこの後がキツくなるのは重々承知だ…頑張れわたし!



「でもね!そのお詫びに、あの子達にお弁当とケーキを作って食べてもらうのって、別に悪い事じゃないでしょ?」
「じゃあなんで今日なの?」
「えっ?…と、そぉ〜れ、は」
「僕が昨日今日、出張だったからだよね?」
「うっ、いや!だって!悟に知られると邪魔されるに決まってるもん!」
「でも隠し事は良くないよね?」
「………悟のせいでしょ?」
「ふぅん?」



「へえ〜、そぉ、隠し事してたのに謝ってくれないの?」と言う悟に、口をへの字にして頷く。






「そ。ま、いいけどね」
「…………じゃ、私はお風呂に入りますっ!」



とにかくここから逃げようと、急いでベッドから降りようとすると、腰をガシっ!と掴まれ、悟の膝の上に抱っこされる。



「うー!はっ、離して…!」


しっかりと筋肉のついた腕を腰から引き剥がすのは至難の業だ。ググ〜!と力を込めて押しても悟の腕はびくともしない。



「んふふ、可愛いねえ。あ、名前に選択肢をあげるよ」
「ん?選択肢?」
「そ!」


そう言うと、悟は先程持って来た物を再び手に取り、片手にエプロン、片手に薄ピンクのテープを持って私に見せた。





「裸エプロンか、手足の拘束。どっちがいい?」




言われた事が理解できず、ポカンとする。




「このテープ、粘着性はないから痛くないし、名前の肌も傷付けないから大丈夫!」
「……いっ、いやいや、いやいやいや!」
「手足を縛られるのが嫌なら裸エプロンは?こないだ同じ様な事したし、こっちの方がいいかな」
「こないだのは、悟が勝手にしたでしょ?」
「無理矢理じゃなかったでしょ?名前も合意したも同然だったでしょ」
「うっ」
「ほら、どっちがいい?僕はどっちでもいいよ、名前に選ばせてあげる」



……とんでもない究極の選択だ。
二年生トリオに付けられた傷は割と深かったらしい。こんな強行に出られるとは思わなかった。







「ど…」
「ど?」
「……どっちも、嫌です…ね、」
「へぇ?謝らない上に選択肢も選ばないんだ」
「だっ!だって!私悪くない」
「そ、いいよ。そのかわりどっちも選ばないって言うんなら、今日はひどく抱く。名前がどれだけイってもどれだけ泣いても、絶対にやめない…朝までね?」




なんっでだよ!!!朝まで!?えっ、12時間以上あるけど!?とは思ったが、これ以上悟を刺激するのはまずいので口をつぐむ。




「ううううう」
「そのかわり、どっちか選んだら優し〜く抱いてあげる」
「ううううう」
「唸らない唸らない。名前、どっちにするの?」






裸エプロンか………手足の拘束か………

どんな選択だ…!どちらも決して、決して選びたくないが、朝まで悟に付き合う体力は持ち合わせていない。どちらも拒否すれば明日動けなくなるのは確定だ。というかなんでこんなことに…と大きく溜息が出そうになるが、悟に勝てる方法など無いのだ。諦めた方が早いか…!と思い直し、悟に向き合う。






「………優しくしてくれる?」
「もちろん!」
「じゃあ………こっちに、する」



私が選んだのは薄ピンク色のテープ。
絶対嫌だ!絶対に嫌だけど!エプロンは一年生達から貰ったプレゼントだ、それを選ぶよりはまだ…と、仕方なく拘束される方を選ぶ。決して好きで拘束されるわけでは無い。どちらも選ばなかったら悟は本当に朝まで私を抱き潰すだろう。やると言ったらやる男だ、身をもって知っている。こんな所で有言実行してもらわなくてもいいのだが、そういう男だから仕方ない。そう、仕方ない、諦めよう、相手はあの五条悟なんだから、そうでしょう?最初から勝ち目はない、そう自分に言い聞かせてなんとかこの状況を飲み込んでいく。




「んふふ、こっちね!さっき買っておいて良かった〜!初めてアダルトグッズのお店に入ったよ僕」
「………あぁ、そうなの…」


どうでもいい情報をくれた悟に、適当な返事をする。


「じゃ!お風呂行こっか!」






ウキウキな様子で私を抱き上げて浴室へと向かう悟に、私はこれからされる事を想像し、ゾッと血の気が引いたのだった。






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