勝ち逃げの美学1






本日、伊地知くんは外回りだ。私は、天気が良いので陽当たりの良い所でランチをとることにした。
温かい緑茶が入った保温ボトルとお弁当が入ったランチバックを持って外へ向かっていると、「おっ、名前じゃん」と後ろから声がかかる。
振り返ると、パンダくんが声をかけてきた様だ、その隣には真希ちゃんと棘くんの姿もあった。




「よ、今から飯?」と真希ちゃんが聞いた。



「うん、みんなも?」
「そ、一緒に食おうぜ」
「しゃけしゃけ」





二年生トリオと一緒に外へと出ると、風もなく暖かい日差しが当たる。


それぞれ階段に座り、私はランチバックから水筒とお弁当箱を出す。
みんなは寮母さんが作ってくれたのであろう、同じフードパックを持っている。




「おぉお〜!出た、名前のお弁当!」



パンダくんにそう言われ、蓋を開けた自分のお弁当を見る。何の変哲もないただのお弁当…今日はオムライス弁当なので、割と彩りは良い方だ。


「お〜美味そ〜」
「しゃけしゃけ」
「あ、ありがとね」



みんなのもめちゃくちゃ美味しそうだけどね。私も今度寮母さんに頼もうかな。


「今日はオムライスか〜」
「五条も今頃おんなじ弁当食ってんのか」
「ツナマヨ」


え、何だろうこの空気。さすが二年生、なかなかに連携のとれたチームプレーである。




「えっと、もしかして、これ絡まれてます?」
「オイオイ姉ちゃん!絡まれるって言い方はないんじゃねえのォ!?」
「おかかっ!」
「それが絡みにいってんだろ」



真希ちゃんが居てくれて良かったな、と心から感謝してお弁当を食べ進めると、パンダくんが話し出す。



「悟がさぁ、名前が作ったお弁当の日は必ず自慢してくんの」
「まぁ鬱陶しいのなんのって」
「しゃけ」
「………………」
「『見てこれ!今日は鮭と卵の混ぜご飯のおにぎりに〜、ささみにチーズと大葉を挟んだフライ!ブロッコリーと海老のマヨ和えと〜、うずらの卵を竹輪でクルクルしたやつ!バランスも見た目も完璧でしょ!んんっ、うま〜〜!』だからな?」
「…全部覚えてんのか?」
「…こんぶ」
「………えと…すいません…」





学生に何してんの悟…!と思いつつ、二年生ズに謝罪をする。



「私もこないだ五条に会った時に、五条がケーキ食っててさ、『見てこのシフォンケーキ、めっちゃふわふわなの。あ、あげようか?いや、でもこれは名前が僕に作ってくれたやつだからな〜』って唯々見せつけられたわ」
「しかもケーキはくれないっていうね」
「すじこ」
「ほんとすいません!!」




こっちにとばっちりがきてるぞ!と思いつつ、二年生ズに再び謝罪を申し上げる。


「いくら」
「ん?…唐揚げ?」



棘くんが、私のお弁当に入っている唐揚げを指差す。




「あー、唐揚げね。あったあった」
「『この唐揚げが世界一美味いんじゃないの?名前お店開けるわこれは。おっ、棘のお弁当の唐揚げも美味しそうだけど、これには敵わないだろうねぇ〜』って悟が棘にマウント取ってたよね」
「こんぶ」
「もう…何て申し上げたらいいか…」





あんにゃろーいい加減にしろ…!と思いつつ、二年生ズに頭を下げると「「まぁ名前が悪いんじゃないんだけどね」」「しゃけしゃけ」とフォローされる。


お弁当を完食したパンダくんが、食後のカルパスを食べながら「あ、」と思いついた様な声を出す。




「名前さ、今度俺達にもお弁当作ってよ」
「しゃけしゃけ!」
「それ最高だな!」


「よっ!ナイスパンダ!」「ツナマヨォッ!」と声を掛けられ、何故かポーズを決めるパンダくんを見て決心する。



「ぃよし!なんならケーキもつけたらぁ!」
「キャー!素敵よ名前さーん!」
「五条のより豪華なやつ!」
「しゃけしゃけ!!」





三人のノリに巻き込まれる私を伊地知くんが気の毒そうに見ていたとも知らず、私は二年生ズに美味しいお弁当とケーキを作ると豪語したのだった。






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