Rondo of madder and the scarlet- -
【2/2】
「ここや」
ここ、と言って指さされたのは高層マンション。真っ白に聳え立つそれは外装からしてちょっと……いや、かなり高そうだ。家賃が。
「え、ここに住んでるの?」
思わず聞き返せば返ってくるのは肯定。しかも、
「そや、最近一人暮らし始めた言うて越してきたばかりみたいやけどなぁ」
「一人で……こんな所に?」
「あ、ルー君。一人でって言うてもあくまでここは集合住宅やから、実際には色んな人が住んでるんや」
茜とは別の意味で驚いていたらしいルークに睦がそう説明すれば少し安心したように納得した様だった。
「ま、何はともかく行ってみようや」
「あ、待ってよ」
サクサクとマンションに入っていく睦に茜とルークも急いで追い掛けた。それからエレベーターに乗り込み、七階へと上がる。そこから幾つかの扉を通り過ぎ、五番目の扉の前で睦は立ち止まった。
「ここにいるのか?」
「そやで!」
ルークが少し緊張した様子で睦に問いかけると睦頷いて返した。正直な所、茜自身も大分緊張していた。睦の親戚(?)とは確かに会った事がある。己の記憶に残る"彼"の性格で特に印象に残っているのは……………とにかくおk
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「って、何してるのよ!?」
何故か突然インターホンを連打し始めた睦に茜が慌てて腕を掴んで止めた。因みにルークは突然の事過ぎて呆然としていた。
「何って、インターホン押しとるだけやないか」
「押し過ぎよ! 一回で十分じゃない」
常識を考えなさいよ、と怒鳴れば睦はえー、と不服そうに眉を下げた。
「だってアイツ、一回じゃあまず出て来ないんやもん!」
「だからって、そんなにしたら……」
「強行あるのみや!」
「ちょっ……!!」
茜が止めるのも聞かずに睦は今度は反対の手でインターホンを連打し出した。これでは流石に茜では抑えられず、ゆっくりと睦から離れるとルークの後ろへと隠れて目を瞑り、耳を押さえ出した。
「茜?」
ルークが不思議そうに問いかけてくるが、こればかりは無視した。睦は未だにインターホンを連打し続けている。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン…………
ガンッ
「うるっせェェェェェェェェェッッッッ!!!」
「ぐはっ!?」
何度目がわからないインターホンの音がした後に突然ドアが開き、飛んできたのは怒声と、蹴り。そしてそれは見事に睦の横っ腹に命中し、彼の体は近くの壁までぶっ飛んだ。
ルークの後ろにいた茜が背中越しに震えたのがわかったが、ルークもまたいきなりの事に心臓が飛び出るほど驚き、固まってしまった。そんな二人の反応などお構いなしに出てきた人物は睦に近付くと問答無用で胸倉を掴み上げ、それ程高くない塀へと彼を押し付けた。
「テンメェェェ……毎っ度毎度人ン家来ては騒がしくしやがってェェェ……いい加減死にてェようだなァ、オイ」
あ、やっぱり毎回なんだ。とルークは内心ビクビクしながらもそう思った。茜は未だに彼の背中で震えている。
一方、睦は苦しそうにしながらもにこやかに笑っていた。
「は、はは……相変わらず過激な愛情表現やなぁ。そう言うのは嫌いやないで、りっくんv」
「やっぱ今すぐ明日の朝日を拝めなくしてやる」
それは正に死ねと言っているようなものだろう。そして彼の目は本気だった。それは流石に止めるべきだと思ったらしいルークが間に入ろうとして、茜はそっと彼の腕を引いて止めた。
「今は、やめた方が良いわ」
「え、でもよ」
「いくら何でも本気で殺しはしないから。ただ、あの人はね……」
そう、あの人……睦の親戚と言うあの青年、坂月 陸也はとってもとーっても怒りっぽい性格なのだ。
記憶と寸分違わぬその様子に茜は再会の喜びよりも非常に帰りたい気持ちで一杯だった。
2012.6.20