Rondo of madder and the scarlet
- 通称不良な狼さん -

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「え、休み?」



ルークがこの世界の文字が読めないと発覚した翌日。教えるのが上手いと言う睦の親戚に話を付けるため、茜とルークはいつもより早く学校へと来た。それからルークのクラスへと一緒に行けばそこには睦と少女がいて、二人に気付いた睦が残念そうにその親戚が学校に来ていない事を告げたのだった。



「そや、今日は俺も早う来て話してみよう思うたんやけどなぁ。来てみれば来てみたで居らんし、メールしてみたら今日は休むて返ってきたんや」

「そうなんだ……」



休みなら仕方がない、とルークが残念そうに頭垂れていると、睦と一緒にいた少女が溜め息を吐きながら口を開いた。



「あの人の場合はよくある事です。特に今日みたいに理由も言わずに休む時は大抵がサボりなんです」

「まぁ、来てても最近はあまり授業に出とらんけどな。流石、不良と呼ばれてるだけあるなぁ」



あはは、と笑いながら言う睦に少女は眉を吊り上げて「笑い事じゃありません」と支局当然なツッコミを入れた。……それはさて置き、



「え、と……あなたは?」



誰だろう、思いながら問い掛けると相手はハッとして、それから柔らかい笑みを浮かべて名乗った。



「私は山吹君、それからルーク君と同じクラスの北條 愛理花です」

「鴇崎 茜です」



お互いによろしくお願いします、と挨拶をし終えると睦が愛理花の肩を組みながら「この人が前に言うた委員長や!」と言った。それに愛理花は呆れたように再度溜め息を吐く。



「山吹君、何度も言うけれど私は去年の委員長であって、このクラスの今の委員長は山吹君でしょう」

「んー、それはわかってるんやけど……エリリンってなーんか"委員長"って感じがピッタリなんや」

「確かに……」

「うん、とっても真面目そうだもんね」



と、ルークと一緒に同意すれば案の定困ったような表情をされてしまった。



「ルーク君達まで……もう」

「ご、ごめん……じゃあ、愛理花で良いよな?」



ルークが謝りながらそう言えば、愛理花は目を丸くした。そんな彼女の様子に首を傾げる彼に茜が控えめに「あのね」と言った。



「ここではあまり人を下の名前……と言うかファーストネームじゃ呼び合わないの。家族や親戚、親しい友人とかは別だけど」

「あ、そうなのか。悪い……え、と北條?」

「……ふふ」



慌てて言い直したルークに愛理花は小さく笑い、それから首を横に振った。



「貴方の呼びやすい呼び方で良いですよ。それに私だってルーク君の事は最初から名前呼びですしね……それから」



そう言って愛理花は茜を振り返った。



「鴇崎さんも、私の事は好きなように呼んで下さいね……誤解のない程度に」



それは恐らく睦の言う「委員長」呼びの事を言っているのだろう。それに苦笑を漏らしながら頷いた。



「わかったわ。じゃあ、愛理花ちゃんって呼ぶね」

「ありがとう」

「うんうん、女の子の友情は可愛らしくてはホンマにええなぁ」

「お前な……」



嬉しそうに笑い合う茜と愛理花に睦がしみじみと呟く。それにルークがガックリと肩を落としながら溜め息を吐いたのだった。



*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇




「…………で、どこに行くんだよ睦」



放課後になり、茜とルークは睦に連れられ街中を歩いていた。賑わう商店街を抜け、大通りを渡り、それでもまだ目的地の見えぬ路にルークが少し疲れたように睦に問いかけた。



「んー、学校に居らへんのなら直接突撃かましたろかと思うてなぁ」



それにえ、と反応したのは茜だった。



「でも、いきなり行くのは流石に悪いんじゃない? それに、本当に体調不良だったなら尚更……」

「えー大丈夫やろ、多分」

「多分って……」

「お前って、時々人の扱い悪いよな」



適当に返す睦に呆れたように言うと、ルークもそれに便乗した。しかし当の本人は全く気にした様子はなく、至っていつも通りだった。



「まぁ、アイツの場合は寧ろ強行するくらいが丁度ええんよ」



そう言われてしまえば二人は顔を見合わせて肩を竦めるしかなかった。

それから睦が立ち止まったのは直ぐの事だった。




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