Rondo of madder and the scarlet- 放課後遊び -
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放課後、睦に連れられて茜とルークが来たのはゲームセンターだった。賑わう若者。あちらこちらから聞こえてくる様々な音楽。大きな機械の数々……。滅多にこの様な場所に来ない茜は勿論、初めて来たルークはそのあまりの賑やかさに目を見開いた。
「すっげー……!」
「人が多い……」
「そりゃあ、ここらじゃ一番大きなゲーセンやからなぁ!」
それぞれの感想を漏らす二人に睦は笑いながら言った。それにルークは首を傾げた。
「ゲーセン?」
「ゲームセンターの訳し語や」
「ゲームセンター……なんかカジノみたいな所だな」
「あ、カジノはあるんだ」
そのカジノとは少し違うけど、と思いながら言うとルークは一つ頷いて返した。次いで何かを見つけたらしく、興味深そうに駆けていった。
「これは何だ?」
「え、とそれはクレーンゲームって言って、そこの二つのボタンで操作しながら景品を取るの」
「ヘェ、…………やってみても良いか?」
そう言ったルークの目は小さな子供のように輝いていて、思わず睦と二人で噴き出してしまった。途端にルークは拗ねたように口を曲げた。
「な、なんだよ。そんなに可笑しかったか?」
「悪い悪い、そないな事あらへんよ」
「そうだよ。ただ反応が新鮮だからつい笑っちゃっただけ」
謝りながら説明すれば渋々と「そうかよ」なんて言って財布を取り出す。お小遣いは今朝遥香から渡されているのでお金の問題はない。ただ、元より貴族な彼の金銭感覚が多少心配されたが、使いすぎそうになれば自分たちが止めれば良い。
ルークにどのくらい入れれば良いのかと聞かれ、百円玉を二枚入れるよう教えると早速彼は財布から銀色に光る百円玉をゲーム機の穴に入れた。ピロリ〜ンとコミカルな音と共にゲームが始まった。
「そこの点滅しているボタンから押すの。すると矢印の方向にクレーンが動くから、欲しい景品の所に近付けていってみて」
「わかった!」
それからルークは神経を集中させ、クレーンを操作していく。それを二、三歩後ろで見守りながら睦は茜に小さく話し掛けた。
「楽しんどるようで良かったなぁ」
「うん。最近は結構ばたばたして落ち着ける時間が持てなかったから、気分転換に丁度良かったわ」
ありがとう、と睦に言葉に頷きながらもお礼を言って返すと、睦は「気にせんてええよ」と笑った。その時丁度、ルークの歓喜の声が上がった。
「よっしゃあっ、取れた!」
そんな声に彼を見るとその手には白眼を剥いた二頭身のウサギのような縫いぐるみがあった。白眼、と言ってもよくある可愛らしい物ではなく、血管まで描かれているような可愛いとは程遠い感じだった。
「キモい……」
「ははっ、キモいって言うかおもろいなぁそれ」
その何とも言えない縫いぐるみにそれぞれの感想を漏らすとルークは縫いぐるみをブラブラさせながら笑った。
「何かセンス悪いよなーこれ。でも面白ェ」
「ま、それがこう言ったキャラクターの狙い目なんやけどな」
「そうなのか?」
「そう言うもんや、多分」
「多分かよ!」
信じちまったじゃねぇか、と突っ込むルークだが、睦の言った事は強ち間違いでもないと茜は思った。
(じゃなきゃ流行らないわよね、こんなの)
「あーちゃん、あーちゃん!」
「! 何?」
睦に話し掛けられ、そちらを向くと彼はニコニコとある機械の方を指さした。
「折角やし、プリクラ撮らへんか?」
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