Rondo of madder and the scarlet
- 焔、学生になる- Student - -

【1/2】


西滝之瀬高等学校こと通称・西高と呼ばれるこの学校には、昨年の冬に一人、今年度の春一番に一人、転校生が来た。高校の転校生なんて茜曰く珍しいらしく、只でさえほんの数日前に一人来たばかりなのにまた一人、それも外国人(?)が入ってきたとあってはそりゃあ目立ちはする。茜や遥香からもその辺は覚悟して置いた方が良いと忠告されていたが、それをもっと重く受け止めておくべきだったと、教室に入って僅か10分足らずでルークは激しく後悔したのだった。



「ルーク君ってどこの人?」

「その髪って地毛なの!?」

「カラコン入れてる?」

「趣味は何?」

「彼女とかいるの!?」

「家はどこ?」












…………………。










それはもう質問責めのオンパレードで、しかも何故か周りにいるのさ女性ばかり。激しく叫びたい衝動に駆られたが、そうしなかった自分を誉めたいと思う。そしてそれと同時にルークは女性が苦手な幼馴染みの気持ちを少なからず理解したのだった。

未だに色々と聞かれるが、そろそろ精神的に限界へと登り詰めていた時、ドアが開く音が聞こえ、途端に響くのは怒ったような少女の声。



「皆さん、授業はとっくに始まってます!」



金に近い明るい茶色のショートヘアで、紫のヘアピンをしたその少女はルークの周りにいた女子達に近付くと困ったように溜め息を吐いた。誰かが「委員長」と呟く声が聞こえた。



「廊下にまで声が響いてましたよ。転校生に質問したい気持ちもわかりますが、今はその時ではないでしょう?」



だから後にして下さい、ときっぱりと言った委員長にルークに質問していた女子達は少し残念そうに「はーい」と返事をするとそれぞれの席へと戻っていった。それから授業担当の教師が入ってきたのは直ぐの事だった。



「それじゃあ、前の続きから行くぞー」



その言葉と共に授業が始まり、やっと落ち着いた状況にルークは人知れず大きな溜め息を吐いた。それを見ていたのは彼の隣の席に座った、先程の委員長と呼ばれた少女だった。



「疲れちゃいましたよね。大丈夫ですか?」

「え、あー……うん。まぁ、なんとか」



苦笑しながらそう言うと、返って心配させてしまったらしく、申し訳なさそうに謝られてしまった。それにどう返そうかと考えていると、不意に後ろから肩を叩かれた。驚いて振り向けば、そこにいたのは睦だった。



「やぁやぁ、ルー君。初っ端からモテモテやないかv」

「………嫌味かよ、それ。あとルー君て何だし!」

「なんやご機嫌斜めやなぁ。それにええやん、ルー君かわええやん」

「可愛くぬぇっつーの!」

「そこ、煩いぞ」



思わず声を張ってしまい、教師に注意されてしまった。慌てて謝り俯く。これはとんでもなく恥ずかしかった。後ろから声を抑えた小さな笑い声が聞こえてきて、一度振り向き睨み付けると慌てて顔を反らされた。それにルークは再び前を向いた。

睦の隣の席に鞄はあれど、何故か誰もいないのがとても気になったと言うのは、彼だけの内緒である。



*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇




「下の階から三年生、二年生、一年生の順に教室があって、四階が実技系授業の教室とその準備室。それぞれの階の端は一階が保健室と第一パソコン室、二階が図書室と職員室、三階が和室と第二パソコン室で、あとは屋上がある。………取り敢えずは全部回ったかな?」

「うん、多分」



昼休み。茜はクラスメイトの桐原に以前言っていた学校案内をしてもらい、自分達のクラスがある二階へと戻ってきた。校内地図を見ながら一つ一つ場所を確認して回ったから、大体の場所は覚えた。



「今日はどうもありがとう」

「どう致しまして。また何かあれば遠慮なく言ってくれよ」



その言葉にわかった、と一つ頷いた所で、廊下がざわついた事に気が付いた。何かと思ってそちらを振り向けば、見覚えがありすぎる二人が盛大に(主に片方を)人目に(大多数が女子)引きながら歩いてくるのが見えた。



「あ」



どうやら向こうもこちらに気付いたらしく、二人の内の片方が声を上げた。



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