バスに乗って ※現パロ※ 修学旅行のバスに乗り込んだとき、隣にいたのはいつも通り文次郎だった。眠っているうちにどれほど時間がたったか分からないが、不意に肩を叩かれ目を開けるとそこに座っていたのは、 「留三郎。どうした?」 「あー…いい席だな、ここ」 なんだかむすっとしているが、多分いつもの照れ隠しだろう。 ここは一番後ろで先生の目は届かない。おまけに私の方は窓際で、友達の輪にも入らず今まで目を瞑って眠ることができたわけだ。 「うん…そうだな」 「…おう」 留三郎の手が無防備に座席の上に放り出されている。誰にも見えないだろうから、その、温かくて私のよりも大きな手を、ぎゅっと握った。 「隣へ来たついでに、キスしてくれてもいいぞ」 「あほか」 留三郎はついにそっぽを向いてしまったけれど、しっかり指を絡めて握り返してくれた。 まだまだ、目的地に到着しなければいい。 end. |