30分ほどゆっくりと進んでいるけど、未だに木々が生い茂った森?が続いていた



振り返れば木々の間から学校が見えるけど一応持ってきたコンパスを見ながらゆっくりと進む
近くに村があったとしても、昨日のあの状況から迂闊には近づかないほうがいいのは明らかだし、とりあえず水辺とか川を探した方がいいのかもしれない
トランシーバーを持ってきたほうがよかったと、今更になってから気づく
目的もなくこのまま闇雲に歩いていいものだろうか


「このまま山道続くのかな?」


「さぁ、でも近くに村とかあるんじゃねぇの?」


『せめて川とかあったらいいんだけど・・・。』





パキッ


右側から枝が折れる音がして、思わず立ち止まってそっちを見つめる


「桜子先生どうかした?」


『いや、なん・・・なんでもない。』


気のせいであってほしいと、音がした方を見るけれど
何もなくて、強く握りしめた拳から少し力が抜ける



ギャァァアアァ!!!!
ズザァアッ


途端に前から悲鳴とバタバタと足音がして
全身に力が入る

池上先生に槍を突き刺す人がいて、その後ろにも2、3人刀や鎌を持った男がこっちをみていた


「くそっ!」


私のすぐ後ろにいた松本くんが一瞬のうちに前へでて、池上先生に今だ槍を突き立てる男に木刀で殴りかかった

それを合図にしたようにいっせいに顔に泥を塗った男らがこっちへと突っ込んでくる
とっさに刺股を構える私だったが




「せんせぇっ!!!」






バシィッイ





気づけば私は地面に叩きつけられていた

どうやらさっきの音は気のせいなんかじゃなかったらしい、右側からも棒をもった人が出てきて私はそれに殴られたらしかった
刃物じゃなかったのが唯一の救いか

なんとか握ったままだった刺股を振り回す
相手は距離をとって1歩後ずさった


その一瞬の隙に伊達くんがタックルをかましそのまま木に抑えつける、強烈に木に叩きつけられた身体はぐったりとして気絶したようだった




「伊達っ!!!」


松本くんの大きな声が響いて
伊達くんに刀を持った男が襲いかかろうとしていた









一瞬だった





『アアアァッー!!!』



ぐじゅりと、頭に響く感触
鼻につく鉄の匂い

視界を染める鮮明な赤色
瞳孔の開いた男の目がわたしを見ている







刀を振り上げる男に刺股を突き出し、男が体制を崩したところに馬乗りになって
カッターナイフを思いっきり突き立てた




一瞬だった







何回刺したのかわからないくらいグチャグチャになった男の喉に突き刺さったカッターナイフと私の右手が真っ赤に染まっていた







「桜子先生・・・。」



伊達くんが腰を支えてくれてゆっくりと私は立ち上がった





ゆっくりと顔をあげるとあたりの地面が赤く染っていて
走り去っていく男の後ろ姿が見えた
佐藤くんは息を荒くして座り込んでいる






『青柳くんは・・・。』


震える声で伊達くんを見上げる
伊達くんが私と目を合わせることはなく








「いったん学校に戻ろう。」

松本くんのその一声で私は察するしかなかった












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