それでも朝は必ずやってくる
校内にあった食べ物を複数の生徒と一緒に配っていく
少しだけ満たされたお腹に微かな安心を覚えるが
すぐに不安に襲われる
「えー、おはようございます。おはようございますーみんな聞いてくれ・・・」
山口先生が話しだした
「ざけんな!!誰が行くかよ!!んなもん!!」
偵察メンバーを読み上げる山口先生に筒井くんが声を荒らげる
「テメェら教師だけで行けよ!!責任取れんのかよ!!なぁ!!」
ぐさぐさと刺さるその叫び
「死にたくねぇよ。」
彼の言葉が体育館に響く
「桜子ちゃん、それ持っていくのか?」
集合場所の昇降口に行くと、アメフト部の高橋くんが話しかけてきた
彼のクラスは去年副担任だったので、進路相談なんかも私もしたりして
そこから顔も幼いからか彼からはちゃん付けで呼ばれるようになってしまった
舐められていると言われるとそうだけど、まぁあんな図体のでかい生徒だし、昔はヤンチャしていたみたいだから注意しても辞めないので今は不本意ながら受け入れている状態だ
『職員室に何本かあったから。』
そう言って手に持っていた刺股を彼にみせた
「へー、不審者対策ってやつか?思ったより軽いんだな、これ。」
『危ないよ高橋くん。』
刺股を手にとってブンブンと振り回す高橋くんは様になりすぎている
いい身体しているだけはある
不安な気持ちで強ばっていた顔が、ほんの少しだけ緩む
そこに松本くんと西野くんがやってきた
「おい、いいのか・・・。死ぬかもしれねーぞ。覚悟できてんのかよ・・・。」
「あ?覚悟?んなもんねーよ。学校で大人しくしててもしょうがねーしな。」
「それに、女が行くっつってんのに、俺らが行かねぇのもダメだろ。」
「まぁ、たしかにな。」
『え!!そんな。』
「いや、ガチでさ。死ぬなよ。桜子ちゃん。」
そう言って私の頭をポンポンと無でる高橋くんは凄く落ち着いて見えた
顔をあげてみると、皆落ち着いていて
自分がいかに頼りないか、かっこ悪いか痛感した
覚悟を決めないと
「じゃあ、別れて行動するぞ。池上先生と戦国先生には松本たちが着いて行け。
あとは俺について行くぞ。」
ついに行くのだ
手に持っている刺股をぎゅっと握りしめる
私達は正門を踏み出した
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