〈高橋鉄男〉






「探してる人がいないんだ・・・」


西野がA棟に行くと、言いだした
たしかに、松本たちも戻っているかもしれない


桜子ちゃんだって



ガシャンガシャンッ!!



「おおい!!開けてくれぇ!!奴らが!!奴らがぁ!!」


シャッターを叩く音が響く

ドアを開けると、そこには佐藤がいた


「あぁ!!助かった!!桜子先生が!!」


そうだ!こいつは桜子ちゃんと一緒だったじゃねぇか!
ばっと廊下をみれば
向こうで桜子ちゃんが槍を構えて戦っていた

そこに戸田が飛び出して行って一気に斬りかかった
桜子ちゃんも槍を男の喉元に突刺した
噴き出した血が桜子ちゃんにかかる


倒れた相手から槍を引き抜いてこちらを振り返る



顔も洋服も
真っ赤に染まっていた



『みんな大丈夫?』


そう微笑んだ桜子ちゃんはゾッとするほど綺麗だった






「桜子先生っ!!」


そのままプツリと糸が切れた人形のように
廊下に崩れる桜子ちゃん
とっさに俺は廊下に飛び出して駆け寄る


「おい!!桜子ちゃん!!しっかりしろ!」


ぐったりとした桜子ちゃんを抱き上げて皆のところまで駆け込んだ





松本が桜子ちゃんと佐藤を逃して
一人でA棟に残ったらしかった

斬りかかられた桜子ちゃんだったが、ギリギリで避け
そこから松本がそいつに殴りかかって二人を逃してくれたらしい


「俺が足を引きずっていたから、桜子先生がずっと俺を・・・
松本も・・・あいつは・・・ヤバい・・・」


「助けに行きます。」


松本はいなくてはならない奴だ


「行くぞ!!Aのどこだ!松本は!?」


いても立ってもいられねぇ


「高橋はまだ肩の傷が塞がっていない。今はやめとけ。」


「く。わかった。」


階段に保たれるように倒れている桜子ちゃんを見て、俺はここを守ると気合を入れた









桜子ちゃんは俺が一年の時の副担任だった
まだ1年だし、もともと勉強なんてしてなかった俺は進路なんて対して考えてなかった
桜子ちゃんはそんな俺を見てアメフトはいろんな大学もあるし
私立で推薦だったら、とか国立でもこんなところもあるよ。去年卒業したアメフト部の子はぁ、なんて俺なんかにすげぇ一生懸命考えてくれて
どっちか言えばいつも生徒の話をニコニコ聞いてる。ってイメージだったのに
全力でサポートさせてね!だなんて真剣な目で話すから
すげぇ嬉しかった

もともとラグビーとか好きらしく、身体が大きな男性は素敵だよ!と筋トレがきついとこぼした俺に言ってくるし
教師らしくないとは思う
単純だけど笑顔が素敵。ってやつですげぇ可愛い

だから、こんな普通じゃない状況のせいか
わかんねーけど
俺は桜子ちゃんを守りたい



目を瞑る彼女の小さな手を俺は優しく握った





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