ユニホーム
屋上で練習が出来るようになってから、かなり遅くまで練習するようになった。
もちろんそれぞれバイトなんかもあるから、抜ける事もあるけど。
出来る事は何でもしたい。
それこそ屋上にある器具を磨くのだって、トランポリンのネジが緩んできてないか確認するのだって
どんな小さなことでもやりたかった。
暑い中一緒にいることでチームとしてドンドン纏まってきているのがわかる。
でも、私はどうしてもそこに完全に入りきる事はできない。
それが歯がゆくもあり、でもどこかで仕方がないことだと諦めて自分から線を引いてしまっていた。
本当は、皆だけで練習する時間をつくるために、屋上練習は私がいないほうがいいんじゃないかな。とすら考えることがある。
男子だけの方が弾むものもあるだろうし。
いつも、今日はもう帰るね。と言おうかなと思うたびに
「○、行くで。」とイチローくんが私を落ち込んだ気持ちごと引っ張っていってくれる。
そしてまた私は彼のベッドで眠るのだ。
なんだかこれは良くない事だとはわかるけど、どうしても抜け出せない。
皆の和に少しでも入りたい。自分もこのチームの一員として側にいたい。少しでも一緒の時間を共有したい。
でも、私は皆の役に立っているのだろうか?
屋上へ行くと、また段ボールが届いていて
溝口くんだけがニヤニヤと笑っている。
黒い生地に黄色のBREAKERSのロゴがみえる。
『ユニホームだ。』
「どやっ!」
『かっこいい!めっちゃいいね!』
「せやろ!」
イチローくんと弦くんがTシャツを脱いでユニホームを着てドヤ顔で感想を求めてくる。
一人一人配られるユニホームに、なんだかジワジワと本当にステージで披露するんだ。と実感がこみあげて来る。
「最後に、○。」
『?』
溝口くんが私の前に立ってすっと畳まれた黒い布を差し出す。
「○の分だ。」
『え…。』
ばっと溝口くんを見上げると、フッと優しく笑っていて
声が震える。落とさないようにぎゅっと布を掴んで指先で恐る恐る広げる
黒のポロシャツに黄色いBREAKERSのロゴと、星のマークがプリントされている。
皆とお揃いだ。
「いつもありがとう。○。」
ぶわっと視界が揺れて、顔が熱い。
ギュッと手の中にあるものを抱き締めるように抱える。
「○っ!?」
溝口くんの慌てた声が聞こえる。
嬉しい、嬉しい、自分の分なんかないと思ってた。
私はいつもみんなの一歩外にいた。
『ありがとう、嬉しい。』
「当たり前だ。」
ポロポロと溢れる涙をぬぐって、Tシャツを脱いだ。
「うおっ!」と横で声が聞こえるけど、そんなこと今はどうでもいい。
嬉しくてたまらないのだ。
ポロシャツを着て
『どうかな?』
「「似合ってる。」」
ユニホームを着たみんなが笑ってそう言ってくれて
また視界がぼやけた。
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