>> 描く未来はもう決まっているだろう





うずまきナルトは考えていた。近々はたけカカシの誕生日が来るのだ。彼は学生である自分なぞより遥かに収入はいいし、何より顔がいいから自分から貰わなくとも他の人間からプレゼントを貰うことも出来る。しかし一応世話になっている先生であり校内で自分の事情を知る稀な存在である訳で、日頃の礼をしない訳にもいかない。ナルトとて礼儀ぐらいは弁えている。けれどもカカシが欲しい物など分からないし、貰って困るような物を贈ったとて無駄だ。ナルトは、寝不足で回らない頭を懸命に働かせていた。




「……まき、オイ、うずまきナルト!オマエはこの間の化学の期末欠点ギリギリだっただろ!ちゃんと聞いとけ!」
「わ!あ、センセーそれ人前で言わないで!プライバシーの侵害だってば!」
「プライバシーを守りたいなら平均上回ってから言え!」




(毎回欠点ギリギリってのも大変なんだぞ)




呟いたとて誰も気にはしない。学校でのナルトは騒々しい、馬鹿、といった印象で認識されているから一旦静かになれば誰もその唇の動きを見ている者などいはしないのだ。結局思考を中断させられたナルトは小さく舌打ちをしてパラパラと教科書を捲った。ここには彼の欲しい情報は載ってはいない。




「…結局何も考えられなかったってばよ…」




物思いに耽るナルトを教師は誰一人として放置することはなく、全ての授業で当然の様に名指しで注意を受けた。恨めしく思えども日頃の行いの結果であり、彼の選択した結果である。カカシの誕生日はもうあと数時間しかない。どうしようどうしようと思う間に放課後の教室に人はいなくなってゆき、ついには彼一人になってしまった。




「…ナルト、帰らないの」
「…帰ったってどうせ考えること一緒だし」
「へぇ、何考えてんの」
「オレにだって悩みはあんの。別段大したことじゃねーけど」
「…ふーん、そう」
「…あ、何ソレ、プレゼント?」
「ん?ああ…」




教室に一人残るナルトの元にペタリペタリと特有の音を立ててやってきたのは担任であり数学を教えているカカシで、両の手に大きな袋を抱えていた。その中身を覗き込むと様々な色で可憐にラッピングされた大小バラバラの箱が見える。カカシは銀の髪の頭を困った様に掻くと、少しばかり身を引いた。




「…オレ、今日誕生日だからさ」
「…うん、知ってる」




(それに悩んでんだよ)




ナルトの心中など微塵も気にすることなくカカシはプレゼントの一つを取り出して指先で弄る。ナルトはそれをぼんやりと見ていた。そしてふと思い付いた言葉をそのまま音にする。




「なぁ、思ったんだけどさぁ、」
「うん、何よ?」
「プレゼントさ、オレをあげる。オレの未来」
「え?」




ナルトはカカシの手を取ると、その甲に唇を付けて言った。カカシはといえばその格好を保持したままである。ナルトはそれに機嫌をよくしたのか、綺麗に笑ってみせた。




愛する貴方にオレの未来をあげる。だから、他の女に愛なんて囁かないで。愛する貴方にオレの未来をあげる。いらないなんて言ったって、返品なんて出来やしないから、その長い腕でオレを抱き寄せて。




 




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