>> LEVEL2 01





今日、俺は史上最大の告白をしようと思う。それでも臆病な俺の腕は震えてしまうけれど。伝えたい言葉があるんだ。







白い紙にプリントアウトするはずの文字が浮かばずに、かれこれ1時間が経過する。こういう時にはどんな言葉を書けばいいのか分からなくて、それでも伝えたい言葉は頭の中をぐるぐると回っていて。何時もはさらりと思ってもない言葉が出てくるのにこういう時に限って形を潜めるのだからいい加減質が悪い。




「…どうすっかなぁ…」




部屋には下書きはしたが気に入らなかった為にクシャリと原型も留めない程に丸められた紙が散乱している。まるで乙女の様ではないか。告白する為にこんなに頭を使って、紙に書いては丸め、また悩んで。堂々巡りのそれは徐々に常の思考さえも蝕み、最早引き返せない程の所まで来ていることを嫌になるほどに自覚させた。








俺は、こんなにも貴方の事が好き、です。









伝わらない思いはもどかしい。回らない頭を抱えて君の元へと走ろうとするけれど途中でその足は止まってしまう。伝えたい言葉が、あるのに。








やっとのことで出来た文章を読み返す。簡単な言葉の羅列に嫌気が差したが、今の自分には似合いな気がした。文章を考えている間に降っていた雨は何時の間にか上がっていて、それ程までに集中していたのだとここでやっと気付いた。プリントアウトが終わった音が静かな部屋に響き、その音に再び現実へと戻った俺はその出来に僅かに満足する。やはり未だ腕は震えたままで。














「…来っかなぁ…?」









公園のブランコに座って俺は人を待っている。俺にしては珍しく人より先に来たのだ。ゆらゆらと揺れる視界の端には米花側の出入り口があって、女々しくそこから待ち人が来ないか待っている。気を抜けば震える足でさっさと学校を抜け出しここへと走って来た。嫌われたくないのだな、と冷静なもう一人の自分が遠く呟いた。









「…ねぇ、お兄さんが黒羽快斗さん?」










声を聞いて、また体が震えた。柄にもなく緊張している。ポーカーフェイスを忘れるな。そう言い聞かせる俺は相当滑稽だったに違いない。








「…そうだよ、俺が…」














「…怪盗キッド、でしょ?お兄さん」













鮮やかに笑うその顔に目が離せない。さも愉快そうに子供は笑い、そして真剣な表情で言った。酷く酷く、静かな、声で。透き通るその瞳はまるで俺を吸い込むかの如く深い色をしていた。蒼い蒼い、空の色を。











「…何の用だ、探偵呼び出して。それもどうせ仮の姿だろ?」












態々オメーも暇なモンだな。そう皮肉ったその子供は大人びていて、それでいて何処か悲痛な面持ちをしていた。何が君を悲しませるのだろう。俺は君ではないから全てまでは理解出来ないのだろうけど。








「…今日は、人生最大の告白をしようかと思って」









今日はApril foolではないんでね、嘘は吐けないんだよ。









目を見開くその姿を焼き付けようと俺は全感覚を子供の方へと向けた。我ながら陳腐だとは思ったが、そのまま続けた。深い色を湛えたその曇り無き眼を見詰めたままに。音を立てて吹いた風がその髪の並びを崩していった。













「…俺は、アンタの事が好きだ」












その場の沈黙が、痛かった。感情が蠢いているのが手に取るように分かるその表情が酷く愛おしかったのはきっと、伝えたかった言葉が伝えられたからだろうと頭の中の、誰かが言った。




 


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