ジリリリリリリリリリリ・・・・
頭上で喧しく騒ぎ立てる目覚ましの音で目を覚ます。いつもならベットから体を起こすなりストレッチを始めるのだが今日は一直線でドアに向かう。そしてキョロキョロと周りを見渡すと脇の方に紙袋が置かれているのを発見する。中身を確認すると黒い丈夫そうな布が見え、その瞬間テンションが上がる。制服だ!呪術高専の制服は自由にカスタム可能だ。ナマエの制服は呪術高専に入る理由となった人のデザインを自分が動きやすく少しアレンジしたもの、のはずだった。

「なにこれ」

頼んだものと少しデザインが変わっている。元々は少しおしゃれな軍服のようなデザインで、付いていたマントを取り去ったものというのがナマエの希望だった。もちろん呪術師として戦う上で困ることのないようにパンツスタイルで希望を出していた。それが短めのスカートになっている。誰かのと間違えたのか、と一瞬思うが,胸元のブローチと元々のデザインはほとんど変わっていないため、それがナマエのものだと断言できた。ダメになるまではこれで我慢するか、とため息をついて服を脱ぎ始めた。





「おはよー」
「おはよう」

教室にはすでに伏黒がいて、ナマエが声をかけるとしっかりと目を合わせて挨拶をしてくれたのだが、その視線はすぐに制服に向けられる。何か言いたげにスカートを見る伏黒に普通は同級生の女の子のスカートを見つめていれば変態扱いされるのだろうが、呪術師であるために指摘したいことがあるのだろうと察する。

「それ大丈夫なのか?」

言うか言わないか迷って結局言うことを決めたらしい伏黒はナマエのスカートを指さす。スカートにしてももう少し長いものにしていたらまだマシなのだろうが激しい動きをしたらその中身が絶対に見えると断言できるほど短いのだ。

「パンツスタイルでお願いしてたんだけど・・・」

ナマエがそこまで言うと察したように頷いた。その反応を見てまさか・・・と顔を顰める。

「五条先生?」
「十中八九そうだろうな」
「どうしたのー?あ、その制服似合ってるね」

カスタムに横槍入れた甲斐があったー、と笑う五条に頭を抱える。

「やめてくださいよ・・・」
「でもナマエのその制服の意味は失ってないでしょ?」

軽薄な口調だが核心に触れるようなことを言う五条にこの人はどこまでも「視えている」のだなと思った。
座学の授業は意外にも分かりやすく、呪術に関することだけではなく普通教科もあるのだがクラスメイトが一人しかいないというのもあって進みも早い。決して頭が良いわけではないが、やったらやった分だけできるナマエにとっては少人数でいつでも質問をできる環境はありがたかった。

「つまり術式とは生まれた時から体に刻まれているものだということですか?」
「うん、そうだよー。恵の術式なんかは特に優秀だよね。玉犬とか」

「いちいち俺の術式を例に出さないでください。というかわざとですよね?ミョウジが玉犬を出せってうるさいんですが」
「ケチケチしてないで出してあげなよー」

キラキラと期待に満ちた視線を送るナマエと面白がって煽る五条に伏黒はため息をつく。

「うわあ!ふわふわ!」

式神でも手入れをするのだろうか。二匹ともすごく触り心地が良い。

「じゃ、そろそろ行こうか!」
「へ?」
「は?」

ぽん、と肩に手を触れてきた五条に二人が素っ頓狂な声をあげるとぐわんと空間が歪むような感覚の後、景色が変わった。瞬間、ギーンと何かを弾くような音がする。自分の書いた札が効力を発揮したことを自覚したナマエはすぐに胸元から追加の札を取り出した。

「あれ?恵もお札持ってたの?」
「どういうことですか・・・?」

お近づきの印に、とナマエに手渡された札が少し千切れているのを見て伏黒は顔を顰める。

「どういうことも何も呪霊に攻撃されたんだよ。恵がナマエを見て不思議そうな顔してたから」
「別にこいつの能力疑ったわけじゃないですよ。こんな能天気で呪術師やっていけるのかとは思ったけど」
「え、何ひどい。そんなこと思われてたの!?」

非難の声をあげるナマエのことはお構いなしに伏黒は玉犬に呪霊を食わせた。

「こんなもの食べるの!?」
「ほら、ナマエも玉犬のことただの犬として扱ってたみたいだし?」
「面白がってるだけですよね」
「うん」

ケラケラと笑う五条に伏黒はため息をつき、ナマエはムッとする。常に結界の呪符を持っているナマエならまだしも伏黒が持っていなかったら低級の呪霊とはいえ怪我をする。ちゃんと五条の元で呪術を学ぶことができるのか不安だったが今度はスパルタすぎて不安になってきた。きちんと指導して欲しいとは思っていたが、自分だけでなく同級生にまで迷惑をかけてしまうことをナマエは申し訳なく思った。




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