「あれ?どうしたの狗巻くん。何か抱えて・・・って人!?」

担がれたままじっとしていると声がかかるが肩に担がれているナマエの顔は狗巻の背中側にあるため声の主を確認できない。それに気付いた狗巻に地面におろされるまでの間にまた変わった先輩かもしれないと心の準備をする。
しかし振り向くとそこにいたのは優しい顔立ちをした普通の人間だった。

「あ、ミョウジナマエです!よろしくお願いします」

先程と同じ自己紹介をして勢いよく頭を下げた。

「乙骨憂太です。よろしくね」

そう言ってにこりと笑う乙骨にナマエはこの人優しい人だ!と感動する。

「狗巻くんはなんでナマエちゃんを抱えてたの?」
「こんぶ、明太子」
「あぁ、真希さんから逃げてたんだ」

慣れた様子で苦笑する乙骨にあぁ、あれは日常的なことなのだなと理解する。

「ツナツナ、明太子―」
「それほどでもないよ」

狗巻の得意げな声に照れ臭そうな乙骨を見ると彼を自慢するようなことを言ったのだろうと予測するがその内容は全く分からない。

「・・・すみません、狗巻先輩はなんて言ったんですか?」
「え!?」

頬を赤く染めて恥ずかしそうに答える乙骨をニヤニヤした表情で見る狗巻を見ると、自慢に思っていることは確かだが、揶揄う目的で言ったのだなと理解する。呪言という強い術式を持っていても、普通の男子高校生のような一面を持っているのだなと理解してほっとした。変わった人・・・というかパンダもいるけど意外と馴染めるかも。

「そういえば伏黒くんのところには行った?」
「伏黒くん?」

初めてきく名前に首を傾げる。

「ナマエちゃんの同級生だよ。少し前に挨拶に来たんだけど真面目そうな子だったよ」

五条によると同級生は今のところ一人らしいがどうやら変わった人ではないらしい。呪術についてまだ疎いナマエは是非とも仲良くして色々と教えてもらいたいものだ。担任は頼りないし。

「今どこにいるかって分かったりします?」
「部屋にいるんじゃないかな?案内しようか?」

一瞬勝手に男子寮に入ることに躊躇するが狗巻に連れてこられた時点で男子寮に入っていること思い出し、よろしくお願いしますと乙骨に頼んだ。パンダ先輩も狗巻先輩も女子寮に入ってたしいいよね・・・?
一番の常識人かと思われる乙骨が女子寮に侵入しているのか分からないことだけは不安だが、その乙骨が案内してくれると言っているのだ。悪いようにはならないだろう。

「伏黒くんちょっといい?」

こんこんこん、と控えめに礼儀正しくドアを叩く乙骨に性格が出るなぁと思う。
あまり間をおかずに開いた扉から出て来たのは髪の毛がツンツンと立った男の子だった。乙骨の後ろに立つナマエを見てギョッとした表情をしている。・・・やはり先生は説明をしなかったのだろうか。

「新しく入って来た子だよ。伏黒くんと同級生らしいから・・・」

丁寧に説明してくれるあたり人が良いなと思う。

「ミョウジナマエです。呪符を書くのが得意・・・らしいけど、身体能力は人なみだし呪術に関する知識もまだまだだから色々教えてくれると嬉しいかな」
「伏黒恵。よろしく」

自己紹介は少しそっけないような気がするが先輩方が明るかっただけでこの年頃で初対面だったら当たり前かもしれない。

「あ、そうだ!これからよろしくお願いしますってことでこれ」

ゴソゴソとポケットを漁ると五条に書かされた大量の呪符のうちのいくつかを取り出す。

「慣れてなくてあんまり呪力を込められてないけどある程度の呪霊の攻撃は1回は防げるって五条先生が言ってたから・・・」

ふざけた先生だが見る目は確かだから効力はあるはずだと思い、伏黒と先輩二人に渡す。

「わ!これ本当にすごいよ!一見サポート向きにも見えるけどこれだけの効力あったら自分でも祓えるし!」

ナマエの手にあるいくつかの呪符を見て、狗巻曰く最強呪術師である乙骨が手放しで褒めてくれるのだから少し嬉しくなる。自称最強呪術師の五条に褒められるよりよっぽど嬉しい。渡したものは祓えるものではないけれどそれも渡そうか・・・。

狗巻もツナマヨ、と恐らくお礼を言って笑った。こんなに喜んでくれるのならば後で真希先輩にも渡そう。

「助かる」
「いえいえ!お世話になります・・・。そういえば五条先生がもう一人の同級生は犬が出せるって言ってたけどあれって?」
「式神のことだな。玉犬!」

ぱん!と伏黒が右手で左手を掴むようにすると白と黒の2匹の犬が現れた。

「かっ!」

それを見た途端にキラキラと顔を輝かせて動きを止めるナマエ。いきなり動かなくなったナマエを狗巻が覗き込もうとした瞬間にそれを避けるかのようにしゃがみ込む。

「かんわいいいっ!」

式神なのにその可愛らしさと触り心地の良さを失わない二匹をがっしりと抱きしめる。

「伏黒くん!この子達うちのこに・・・・」
「良いわけないだろ」

先程までの礼儀正しい態度から一変して伏黒の式神である玉犬を連れて帰ろうとするナマエに唖然とする先輩二人。

「こんなに可愛いのに!じゃあせめて寝るときだけでもっ!」
「呪力喰うんだって」
「じゃあこの呪力の伝達率高くするのと少しだけ呪力量増える呪符も渡すから!」
「いいわけないだろ。てかお前初心者じゃなかったのかよ!なんでそんな呪符書けんだよ」
「頑張ったの!」

普段大人しく真面目な伏黒と、真面目そうだと思っていた後輩が可愛らしい言い争いをする姿を見て、二人は微笑んだ。




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