「ナマエちゃんええよなー。あの守ってあげたくなる感じ」
「可愛くて頭もええのに意外とドジなところとかギャップ萌えやんな」

一つ年下の後輩ミョウジナマエは真面目な子だ。荷物の多い先生の手伝いを率先して行っていたり、友人の失くしものを一生懸命探していたり、廊下に落ちていた空のペットボトルを近くのゴミ箱に捨てていたり、校舎内で見るたびに誰かの手助けをしていた。ギャップ、というのは分からないが、ドジな彼女がとても可愛らしいのは理解できた。そんなミョウジが周りの人たちに好かれやすいのも当然だと思った。

「俺ナマエちゃんに告白してみようかな」
「お前なんか相手にされへんてー」
「それもそうやな」

しかし軽い気持ちで告白しようかな、などと言っている意味がわからなかった。
告白って将来結婚したいと思っとる人にするんやないの?悪気があるわけでも害があるわけでもないのだから放っておいて聞かなければいいのにイライラした。


「ナマエちゃんモテモテやなー」

そんなことを言いながら自分の隣に座ってくるアランは彼らの話に何の違和感も抱いていないみたいでこんなことを思っているのは自分ぐらいなのかと驚愕する。

「そういえばナマエちゃん昨日も告白されとったって侑が騒いどったわ」

どくりと心臓が嫌な音を立てる。何かの病気やろうか・・・。

「・・・返事は?」

ききたいけど聞きたくないのは何でやろう。

「もちろん断ったらしいで。まぁあの子の性格からして初対面の人に告白されても絶対に応えんやろ」

そんなアランの言葉に確かにと思う。初めて部活に来た際、双子に囲まれたミョウジは怯えているように見えた。角名曰くとにかく人見知りが激しいらしい。しかしそんな彼女がどのようにして告白を断っているのかというのは気になる。きちんと断れているんやろうか。

「ナマエちゃんの断り方が傑作やったって双子が笑っとったわ」

アランはそう言ってからしまった!と口を閉じる。何で知っとるんや。勝手に見たのか失礼やろ、と双子を巻き添えにしてしまうことを想像した。ごめん、侑。治。
しかしそんな自分の想像とは裏腹に北はじっとこちらを見つめて尋ねてきた。

「どんなふうに断っとるんや?」

アランがキョトンとするとハッと我に返った北はやっぱり教えんでええ、と慌てて首を振った。



だがこれは人の色恋沙汰に興味を持ってしまった罰なのだろうか。

「ナマエちゃんのこと可愛いなあって思っとったんです!俺と付き合って!」

日直でゴミを捨てに来た帰り、ちょうど告白現場を見てしまった。この場から動くにはどうしてもその現場を通らなければならないためすぐに立ち去ることができない。こればかりはいくら正論パンチで双子に怯えられている北でも邪魔やから違うところでやれとも言えず、成り行きで眺めてしまう。断ってほしい。付き合わないで欲しい。何故そう思うのかは分からないまま願いながら見ていた。

「・・・誰ですか?初対面、ですよね?」

可愛らしく首をかしげたナマエだが告白した彼にとってその言葉は絶望でしかなかっただろう。
もし自分が言われたらと考えるとゾッとした。





「ナマエちゃんまたあんな断り方したんかー?意外とやるなあ」

部活後の片付けの最中、騒がしい侑の声が嫌でも耳に入ってしまう。幸い昼の告白現場に居合わせたことはバレていなかったらしく、ナマエの態度が変わることはなかった。

「・・・え、みんな断る前に去っていくんだけど」

他の部員も聞き耳を立てていたらしく体育館がざわつく。

「ナマエちゃんもしかしてあれでまだ振ってるつもりなかったん!?」
「う、うん。初対面だし・・・名前も知らない人だしなって思って聞いたらみんなどっか行っちゃう」

困った顔で床を磨く彼女の後ろで角名は口元を抑えてフルフルと震えている。
・・・・こいつ、知っとったな。
何を笑われているのか分からないナマエは怪訝な顔をしている。

「あの言い方やとなー・・・」
「侑」

面白がりながら教えようとした侑の名前を呼ぶ角名の顔は先程とは違い少しも笑っていない。その表情を見て何かを察した侑は口を閉じる。

「あの言い方だと何???」
「何でもあらへん」

言葉の続きを促すナマエだが、視線で口止めされた侑がそれ以上は何かを言うことはなく、ナマエちゃんはまだ知らんでええねんとその小さな頭を撫でると彼女は拗ねた。ぷくりと頬を膨らませながらも片付けを続ける彼女はとても可愛らしいがそれを言ったらさらに機嫌を損ねてしまうのだろうか。




「先輩!片付け終わりました!」

そんなことを考えながらも黙々とボールを磨き続ける北に差し出されたまるく形の良い頭。こんなに可愛らしいことをしてくる人は彼女の他にいない。

「片付けるのはよなったな」

マネージャーとはいえ部活で動いて汗をかいているはずの彼女の髪はサラサラで男どものようなベタつきは一切感じない。それどころか花のような香りさえする気がする。

「ミョウジの髪、何かええ匂いするな」

ボソリと呟くと彼女はパッと自分から離れて髪を握りしめていた。

「な、ななっ!」
「すまん、嫌やったか?」
「や、じゃないです、けどっ!は、早く着替えてきてください!」

顔を真っ赤にして、視線を彷徨わせる様子を見て、今のは少し変態じみていたかと反省する。慌てて走っていくナマエを眺めながら自分の口元が緩んでいることを自覚した。









「まさかナマエちゃん、純粋に名前聞いとっただけだとは思わんかったわ」
「角名も腹黒いな」

侑の言葉に治が同意する。人見知りの割にはやけにきつく断るんだなと思っていたが断る以前の問題だったとは。気付いているのに指摘しない、それどころか彼女が気付かないように誘導している角名が恐ろしい。

「あいつに彼氏なんてまだいらないから」

そう言ってうっそりと微笑む角名をみて二人はうわあ、と声を漏らした。




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