★笑顔を見せて【5】





「ナツ!オイラ、ルーシィを連れて飛ぶよ!走りづらいでしょ?」
「おう!…そうかサンキューな………、ん…いあ、やっぱ良いや…」

足を止めて一度ハッピーの手元にルーシィを引き渡そうとしたが、考え直した。

「大丈夫、ナツ?」
「おう、…任せろ!」
「…あいっ!」

ニカッとナツが笑ってくれたからか、ハッピーも元気な声を出して返事をする。

「でも…オイラ、もう少し話したかったなぁ、未来のナツと…」
「ハッピー…おまえ、気味悪がってたじゃねえか」
「えぇ〜、ナツだってわかったら怖くなくなるよぉ…。ルーシィの方がよっぽど怖いです、あいっ!」
「……………」


『こらー!なにしてんのよぉ…ナツもハッピーも!!…全く、しょうがないわねぇ〜』


ルーシィの声が今にも聞こえてきそうな、怒りながらも笑ってくれるあの優しい笑顔を思い出してしまった。

「ナツぅ?」
「……悪ぃ、何でもねえ…早く、戻ろうぜ…」

足を速め再び走り出すナツの背中を見つめながらハッピーは思った。


(…ナツのあんな辛そうな顔、見たくないよぉ。ルーシィが笑っていないだけでこんなに変わっちゃうんだね。
昔、リサーナの時だって悲しい顔ばかりしてたナツを見てきたけど、あの時とは全然違うし、ナツ…わかってるのかな。
――未来のナツが言ってたこと、二人にとって大事な問題なんだよね。
ナツに気づいてもらわなきゃ!オイラも頑張るよ。…ルーシィ、未来のナツ…待っててね)




☆★☆★☆


ルーシィの部屋に戻り、彼女を再びベッドへと寝かした。

目を閉じて、ピクリともせず目を開ける気配もない。
近づいて寝息と胸の動きが感じられなければ生きているのか疑ってしまうくらいだ。

「よし!本を見るんだったよな、…どの本だ?」

彼女が普段よく読んでいる、本棚のある方へと身体を向けた。

「…あれぇ〜ナツ!これ、なんだろ?」

何やらテーブルの上に、手紙らしき物を見つけたハッピーへ、何だ?と向き直る。
表と裏を見渡してから封がしていなかった為、気になり開けてみることにした。

やはり手紙であったが、その見覚えのある文字に目を通すと、

「…これ、ルーシィからだよ、オイラ達の名前が書いてある…」

便箋を持ちながらナツの顔色を窺う。

一呼吸おいて――。

「…読んでくれ、ハッピー」

ドサッとその場に座り込んで胡坐をかいた。
何故か緊張が走る。


「じゃ読むよ。

『ナツとハッピーへ。

この手紙を読んでいるとしたら…二人はビックリしてる時、だよね。
そうならなければ良いと思っているけど、うまくいくかわからないから……念の為に、この手紙を書いています。
ナツやハッピーと…もしかしたら、もう話とかができなくなるのかな。それを考えるとこの魔法を使うのはやっぱり怖いけど……、でも…もう限界。
覚悟の上で決めた事だから……。

……ごめん…ナツ。…あたしのこと軽蔑…ううん、嫌いになっても構わないから。
それでも…ナツの心が知りたかったの………。

あたしにとって妖精の尻尾は温かくて大好きな場所。
もし、あたしがいなくなったり仕事が出来なくなったとしても――
あたしの代わりなんて、いっぱいいるしナツなら他にもチームを組める仲間がたっくさんいるもんね。
…リサーナも、戻って来てくれた…。
ナツはリサーナが傍にいてくれたら大丈夫!
あたしよりもずっと頼りになるし、優しくてすごくいい子だもんね〜。あたしが言わなくても十分わかってることよね。

ナツが笑ってるとギルドのみんなが笑顔になるから…それに、あんたの笑顔を守れるのはリサーナ。

というわけで、この手紙を読んでいないことを祈って……。


…ハッピー、心配してくれてる、かな…。泣いてたりしてたら……ごめんね。………ハッピーもナツと一緒に笑っててね。


最後に大事なこと伝えなきゃ、

あたしを“妖精の尻尾”に連れてってくれてありがとう!
今、あたしがココにいられるのは、ナツ達に出逢えたから、だよ。
感謝してるんだからね!

ルーシィより…』


うぅ…、…ルーシィ。あっ!…紙のあちらこちらに丸い濡れたような跡がいくつもあるぅ、…ルーシィ泣きながら書いてたんだよぉ、きっと…」

声が震え大粒の涙を流して泣きじゃくる。
ナツはというと、相棒の言葉を一つ一つ聞き取りながら、膝の上に肘をつき両手を額に付けて俯いていた。




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