★笑顔を見せて【3】





勢いよく窓から外へ飛び出していく。


(もう…、消えられるのは嫌だ…、あんな想いをするのはイグニールだけで十分だ。オレの前からルーシィまで、いなくなっちゃうのかよ…)


うっすらと目に涙を浮かべ、グッと歯を食い縛る。
そんなナツの様子に、後ろから必死に飛んで追い掛けているハッピーには気づくことができなかった。




全く反応のないルーシィを目の当たりにして、戸惑いながらも心の奥ではハッピーに掛けた言葉――

『ルーシィだから、きっと大丈夫…』

という想いもあったから何とかなるだろうと、楽観的な部分もナツにはあった。

しかし、ルーシィが目の前からいなくなったことで昔の辛い記憶が甦ってきたのである。


大切で…傍にいてくれる事が当たり前だと思っていた育ての親が、突然いなくなった…という、あの日の記憶――。



「…イグニール……、ルーシィ………」

走りながら目に入ってくる鱗模様のマフラーをギュッと握った。


「ナツぅ…、待ってぇ…どこまで行く気なの?」

やっとの思いでナツに追いついたハッピー。
後ろから聞こえてきた相棒の声に気がつき、足を止めて振り向いた。


「おぉ、…オレ、夢中で走ってただけだった。…悪ぃ、ハッピー」

頭を掻きながら苦笑いをして答える。

「ルーシィ捜すんでしょ?ルーシィの匂いは感じないの、ナツ?」
「おう、そうだな…」


釣り上がった目を閉じ、嗅覚に意識を集中させた。

「……んっ?近くにいるぞ!…ルーシィの匂い、微かに残ってる」

目を開けて、周りを見渡そうとしたところに見覚えのあるフードを被った何者かが目に入った。


「ナツ、本当!?じゃ、オイラはあっち捜してくる!」
「…待て!!ハッピー」

急に低い声で名前を呼ばれ、戸惑いながらも翼を下ろし、ナツの足元へ降りた。

ナツの目線の先には――




「…あいつ、確か……」
「ナツ?…あっ、そういえばルーシィの部屋に行く時に見たよね。でもなんで、ルーシィと一緒に、いるの…」


ハッピーが肩に移動したかと思ったら、首元のマフラーを強く掴んで、引っ張ってくる。

「おい、ハッピー落ち着けって、引っ張んな!」

相棒へと視線を向けていた瞬間。


「やっと見つけた。ナツ・ドラグニル…」

いつの間にかルーシィを抱え、近づいて来ていた。

「なんで名前、…おまえ、ルーシィに何した?」

握った拳から今にも熱が――炎が噴き出しそうな程、ナツの表情が怒りを表していた。




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